シンポジウム
想像する他者・他者を想像する:
現代アートが描く国境を超えた未来
想像する他者・
他者を想像する:
現代アートが描く国境を
超えた未来
私たちは他者をどのように想像しているのでしょう?そして、他者は私たちをどのように想像しているのでしょう?
私たちが生きる現代は、イデオロギーの錯綜の時代です。多くの社会でインクルージョン(包摂)と分断が同時に進み、世界がかつてないほど密接に結びつく一方で孤立主義と権威主義が台頭しています。私たちは第二次世界大戦の惨禍を経て、人道的な価値観を育んできましたが、そこにも疑問が生じています。日々報じられる軍事衝突や生態系の危機のニュースに触れていると、そうした価値観すらも常に権力政治と隣り合わせの不安定なものであり、維持しづらいものになっていることを痛感させられます。
近現代美術を扱う芸術機関は、表現の自由から脱植民地化、財政の透明化まで様々な問題で左右両派の厳しい目にさらされながら、絶えず変化する状況に即座に対応しなければなりません。芸術はその歴史の大半において、人々が自分とは異なる存在や文化を想像する一助になってきました。その一方で、芸術は他人化(othering)、つまり「他者」をもって自分や自分の所属集団とは異なる存在と見なす考え方も助長してきました。しかし本来、他者を想像するという行為は、自分という枠から一歩外に踏み出し、自分とは異なるかたちでこの世界に存在したり、異なるかたちで世界を認識したりする可能性について想いを巡らせることでもあります。類似点や相違点、自分との距離の遠さと近さといった概念を超えた連帯を、これからのアートはどう提示できるでしょう? 現代アートが国境を越えた視野をもちつづけるために、展覧会の企画者をはじめ、アートに関わる人々は今日のイデオロギーの矛盾とどう向き合っていけばよいのでしょう?
今年のAWT TALKのシンポジウムでは、ゲストに国際的なキュレーター3人を招き、最近のキュレーション・プロジェクトを振り返りながらこうした問題に向き合います。基調講演はフランクフルト近代美術館(MMK)館長のスザンヌ・プフェファーが行います(日英同時通訳)。