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「日本の現代アートシーンは相対的に存在感が希薄になっている」今年初開催の「アートウィーク東京」が目指すもの
近年、日本現代アートシーンの国際的な評価を高める活動と国内アート市場の活性化に向けた環境整備を意味する「アートエコシステム」について議論が起きている。今年5月には公益社団法人経済同友会が、国内のアート産業の現状と課題分析、活性化に向けた8つの提言をまとめた「アート産業活性化に向けたエコシステムの構築」を発表するなど、近年日本のアートシーンでは「健全で活発なアートエコシステム」の構築と活性化の方法を模索している最中だ。
そんな中、一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォーム(JCAP)が、東京のアートスポットを巡回バスで繋ぐ「アートウィーク東京」を初開催。世界最大級のアートフェアとして知られるスイスの「アート・バーゼル」、一般社団法⼈日本現代美術商協会(CADAN)、文化庁、東京都の協力のもと開催される同イベントは、日本アートシーンの国際的な認知向上と海外交流を促すとともに健全で活発なアートエコシステムの構築を目的とした6つの美術館と44軒のギャラリーが参加する。11月4日の開催に先駆け11月2日、都内で記者会見が行われ、森美術館 館長の片岡真実や、一般社団法人現代美術商協会(CADAN)代表理事 小山登美夫、カイカイキキ代表 村上隆など有識者が登壇。現在の日本アートシーンの立ち位置とアートウィーク東京がもたらす影響について見解を示した。
11月4日から11月7日までの4日間の開催時期について、アートウィーク東京のディレクター蜷川敦子は「国際的なアートカレンダーのどこに位置付けるか」を意識したという。森美術館館長の片岡真実は「世界中で様々アートイベントが行われているため、世界から日本に人を集めるためには何か大きなイベントや、日本で同時期に複数のアートイベントが開催されなければならない」とアートエコシステム構築の上で開催時期が重要だったとし、「80年代までは欧米に倣えだった日本。現代アートの世界は今複雑になっており、日本の現代アートシーンは相対的に存在感が希薄になっていると理解している。だからこそ、『この時期に日本に行こう』という構造を作らないとなかなか人を呼ぶことができない状況である」とコメントした。
アートウィーク東京の参加ギャラリー選考に携わった小山登美夫は「東京は広い範囲にギャラリーが点在しており、バスで一気に回れるというのは誰もが夢見ていたことだったが、なかなか実現には至らなかった」と実施以前の東京アートシーンを回顧。ディレクターの蜷川は、「アートバスを巡回させることで都内の遠くに位置している若手ギャラリーにもスポットを当てた」と説明した。
同イベントの特徴のひとつとして、ギャラリーと美術館とアーティストの連帯が挙げられる。「立ち位置がそれぞれ異なるセクター同士が連帯することは同イベントの重要な点」と森美術館館長の片岡は言及。「『見る』を目的とした一般来場者が多くいる美術館と、『買う』を目的とした行為を目的とした人が多く集まるギャラリーというのでは客層も異なる」とした上で、「『見る』を目的とした美術館来場者がギャラリーに足を運ぶ機会と、『買う』を目的としたギャラリー来場者が美術館に足を運ぶ機会を提供しているアートウィーク東京は、『アート好き』と言っても違う関わり方をしていた人たち同士の交流を生む」とコメント。アートバスの巡回はアートエコシステム構築に一役買うとの見解を示し、また現在のアートと企業の連帯についても言及した。
「文化庁や東京都など、行政側も『いかに企業、一般の方を巻き込んで大きなエコシステムをサステナブルにできるか』というのを議論しているところ。そういう意味で、アートウィーク東京ではアートエコシステムを一度可視化し、実施することで、足りない部分やサポートを洗い出し『民がやるのか』『官がやるのか』といったところまで整理できればと考えている。まずは東京をモデルに『どのように現代アートの成熟モデルを作れるのか』を問い、状況を整理しながら、多くの方に見ていただけたら」(片岡真実)。
片岡のコメントを受けて、カイカイキキ代表でアーティストの村上隆は「海外から日本に様々な人が集まり、世界のアートカレンダーに入るものとしてアートウィーク東京は機能することができるでしょう」と賛同。「将来的には学術的経済的に国際的な機会になる事を創出できると思う」と期待感を表した。また村上は日本の現代アートシーンにも言及。「僕らの言う、現代美術は西洋からの輸入物なので全然フィットできなかった」とし「だからこそ、漫画が日本アートシーンの王道になった」と話した。
「僕らのようなアウトサイダーのアート集団は、漫画やアニメーションが最終的な本丸だと考えている。今ちょうど、新国立美術館で庵野秀明展をやっているが、あのような形の展覧会が日本のアートシーンにはフィットするはず。この国に合った芸術がしっかりと発生、育成しているのでそこと西洋美術繋げられれば良いのではと思っている」(村上隆)。
今後「日本のアートシーンがどのように作られ、誰が牽引し、どこで買えるのかを示していく」というアートウィーク東京。来年からはアート・バーゼルの協力を得ながら、本格的に国外に発信していく姿勢を示した。来年もまた11月の1週目に同イベントを開催する予定だという。