AWT
BAR
現代アート、建築、フード。
異分野のコラボレーションを味わう場所。
東京のアートコミュニティを体感できるコミュニティスペース「AWT BAR」が、南青山に限定オープンします。今年は建築家・山田紗子が設計した空間で、ミシュラン1つ星のフレンチレストラン「Sincere(シンシア)」オーナーシェフ・石井真介が手がける、AWT BAR初のフードメニューをお楽しみいただけます。また、アートウィーク東京の会期中に参加施設で展覧会を開催するアーティスト、大巻伸嗣、小林正人、三宅砂織の3名とコラボレーションしたオリジナルカクテルも提供します。
ARCHITECTURE: SUZUKO YAMADA
バーをつくる。バーカウンターとそこに並ぶハイチェア、カウンター上に浮かぶペンダントライトを思い浮かべた。そして横並びにグラスを傾ける客たちと、カウンターの奥でシェーカーを振るバーテンダーも。ものや人によってバーという空間はつくられる。
ものにはそれぞれの輪郭線があり、その外側には空気がある。それぞれの線が集まることで、そこに空気の流れや滞りが生まれる。そのアウトラインだけを取り出してみる。バーという親密な空間をつくるものの輪郭をなぞり、直径13ミリのスチールバーが宙にアウトラインだけを描いていく。すると、がらんとした空間が伸び縮みをはじめ、線の重なりが奥行きをつくり始めた。
線は面や立体のように、その周囲との関係を強く結ばない。その代わり、いくつもの可能性を周りに起ち上げる。囲まれた場所が、開いて見えたり、閉じて見えたり、ひとつになったり、バラバラになったり。人の数や自らの立つ位置によって、場の捉え方はくるくると変わる。ものが場を規定するのではなく、それぞれの人が自ら場を捉える、そのきっかけになるようなものの連なりを思い描いている。
オーダーしたカクテルは、バーカウンターのホルダーに掛けることで固定される。カクテルグラスが宙に並んで、束の間の社交場が完成する。
1984年東京都生まれ。大学在学時にランドスケープデザインを専攻。卒業後は藤本壮介建築設計事務所で建築を学び、その後東京芸術大学大学院に進学。在学時に東京都美術館主催「Arts & Life:生きるための家」展で最優秀賞を受賞し、原寸大の住宅作品を展示する。独立後の主な仕事として、屋内外を横断する無数の構造材によって一体の住環境とした「daita2019」、形や色彩の散らばりから枠にとらわれない生活を提案した「miyazaki」等の住宅作品や、樹木群と人工物が渾然一体となる環境を立ち上げる2025年大阪関西万博休憩施設(2025年公開)などがある。近年の主な受賞に第三回日本建築設計学会賞大賞、第三十六回吉岡賞、Under 35 Architects exhibition 2020 Gold Medal、2022年日本建築学会作品選集新人賞など。
FOOD: SHINSUKE ISHII
日本は四季折々に美しい風景を見せ、食においても独自の風土で育まれる旬の食材が大切にされてきました。
世界に誇れる食材の宝庫を守るべく、私自身も普段から食を取り巻く環境問題に積極的に取り組み、料理を通じて表現しています。
今回はAWT BARのスペシャルメニューとして、私が大好きな日本の風景をイメージして「森」「海」「山」の3つをテーマにフィンガーフードを考案しました。3皿それぞれ、ソルティな1品とスイーツ1品の2品で構成しています。
森
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うさぎの最中
最中ならではのサクサクとした生地に、豚肉のリエットと煮込んだ牛頬肉を挟みました。フランス料理の伝統的なおつまみであるリエットと日本伝統の和菓子とのマリアージュを楽しめる、可愛いらしい一品です。
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焼き芋のチュイル
クリスピーな筒状のクッキーに焼き芋のペーストを絞り込み、スパイスの効いたパンデピスの香りやラム酒をアクセントにしています。
海
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消えゆく魚
魚の骨に見立てた竹炭のクッキーの上に「未利用魚」のタルタルをあしらい、レモンオイルやサフランマヨネーズで仕上げました。水産資源が減りゆく日本へ警鐘を鳴らす、少しブラックな印象の一品です。
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石のようなチョコレート
まるで石にしか見えないチョコレートの中身は、コーヒーが香るガナッシュです。京都の黒七味でほんのりと和のテイストを加えました。
山
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マスカットのようなフォアグラ
フォアグラのムースの中にマスカットのジャムを忍ばせ、カカオバターでコーティングしてマスカットに見立てました。
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甘いどんぐり
どんぐりの形のマドレーヌです。食の未来を考える太田哲雄シェフの「アマゾンカカオ」を生地に練り込み、栗の渋皮煮を加えて焼き上げました。
「オテル・ド・ミクニ」「ラ・ブランシュ」などを経て渡仏。帰国後は「レストラン・バカール」を渋谷に立ち上げ、数年待ちの人気フレンチ店となる。現在は、2016年のオープン以来、連続でミシュラン1つ星を獲得している「Sincere(シンシア)」のオーナーシェフでもあり、2023年に開業した日本ハム球場を抱える北海道ボールパークFビレッジの大注目メインダイニング「シンシアN°」も手がけている。さらに、「一般社団法人Chefs for the Blue」のリードシェフを務めるなど、サステナブルシーフードの普及にも力を入れており、これらの活動が認められ、ミシュラングリーンスターを獲得した。独創的でアートのように美しく健康的。日本愛に溢れ、自然に配慮し、食べる人を幸せにする料理が国内外からも注目される、日本を代表するフレンチシェフのひとり。
ARTIST COCKTAILS
大巻伸嗣「真空のゆらぎ」
無限の空間で織りなされる透明な幻影の波。
真空のゆらぎとは、宇宙空間の始まりの現象である。
宇宙は一つの光の点が大きく膨らみ、闇を取り込むことで生まれた。
宇宙のような静寂の中、光と闇がゆっくりと混ざり合い創り出す新しい世界を感じてほしい。
岐阜県出身。「存在」とは何かをテーマに制作活動を展開する。環境や他者といった外界と、記憶や意識などの内界、その境界である身体の関係性を探り、三者の間で揺れ動く、曖昧で捉えどころのない「存在」に迫るための身体的時空間の創出を試みる。
主な個展に、「存在のざわめき」関渡美術館(2020年、台北)、「まなざしのゆくえ」ちひろ美術館(2018年、東京)、「LiminalAirFluctuation-existence」Hermèsセーヴル店(2015年、パリ)、「存在の証明」箱根彫刻の森美術館(2012年、神奈川)など。「あいちトリエンナーレ」(2016年)、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(2014年–、新潟)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2009年、クイーンズランド)、横浜トリエンナーレ(2008年、神奈川)などの国際展にも多数参加。近年は横浜ダンスコレクション「FuturisticSpace」横浜赤レンガ倉庫(2019年、神奈川)、「LouisVuitton2016-17FWPARISMENʼSCOLLECTION」アンドレシトロエン公園(2016年、パリ)など舞台やパフォーマンスでも作品を発表する。2023年には「地平線のゆくえ」弘前レンガ倉庫美術館(10月9日まで、青森)、「DepthofLight」A4美術館(11月18日まで、成都)が開催中のほか、国立新美術館(11月1日から、東京)でも個展を開催予定。
小林正人「この星のレモンカクテル」
この星の絵の具でこの星の画を描くようにカクテルを想ってみた。瀬戸内海が見えるアトリエに檸檬やライムが実るんだ! (三角形や四角形の)絵のカケラを口に含んでみてください。。。
1957年、東京生まれ。1996年サンパウロビエンナーレ日本代表。1997年ヤン・フート氏に招かれ渡欧、以降ベルギー・ゲント市を拠点に各地で現地制作を行う。2006年に帰国、福山市・鞆の浦を拠点に制作を続ける。絵の具をチューブから直接手にとり、カンヴァスの布地を片手で支えながら擦り込むようにして色を載せ、同時に木枠に張りながら絵画を立ち上げていくというまったく独自の手法を用いて、絵画の在り方を探究し続ける。主な個展に「この星の家族」シュウゴアーツ(2021年、東京)、「画家とモデル」シュウゴアーツ(2019年、東京)、「ART TODAY 2012 弁明の絵画と小林正人」セゾン現代美術館(2012年、長野)、「この星の絵の具」高梁市成羽美術館(2009年、岡山)、「STARRY PAINT」テンスタコンストハーレ(2004年、ストックホルム)、「A Son of Painting」S.M.A.K(2001年、ゲント)、「小林正人展」宮城県美術館(2000年、宮城)など。著作に『この星の絵の具[上]⼀橋⼤学の⽊の下で』(2018年、アートダイバー)、『この星の絵の具[中]ダーフハース通り52』(2020年、アートダイバー)。
三宅砂織「Nowhere in Blue」
パンデミックで世界が静止しているかのようだったあの頃から、わたしはよく庭園や森林を歩くようになりました。木々や川面を見ながらあてもなく歩いていると、ふと、自分もふくめた風景が、どこでもないどこかのように感じることがあります。わたしはそれまで特に発表するわけでもなく、サイアノタイプを作り続けてきたのですが、あるとき、日差しに誘われるように、なんとなく気になっていた写真や生成画像、自生の植物を使って試してみたところ、あの「どこでもないどこか」がブループリントに形を変えて浮かび上がった気がしました。蝶豆茶にハーブリキュールを加えたこの淡いブルーのカクテルは、そんなイメージから着想を得たものです。
1975年、岐阜県生まれ。京都在住。主な個展に、「アーティスト・イン・ミュージアム AiM Vol.9三宅砂織」、岐阜県美術館アトリエ(2021年、岐阜)、「庭園|POTSDAM」SPACE TGC(2019年、東京)、「THE MISSING SHADE 3」WAITINGROOM(2018年、東京)、「THE MISSING SHADE 2」SAI GALLERY(2017年、大阪)など。主なグループ展に、「ミラーレス・ミラー」gallery αM(2022年、東京)、「奥能登国際芸術祭2020+最涯の芸術祭、美術の最先端。」石川県珠洲市全域(2021年、石川)、「MOTアニュアル2019 Echo after Echo: 仮の声、新しい影」東京都現代美術館(2019年)、「第20回 DOMANI・明日展」国立新美術館(2018年、東京)など。