AWT BAR
- E5
- F5
- G1
どなたでも気軽に東京のアートコミュニティを体感できる交流の場「AWT BAR」が、南青山に限定オープンします。今年は建築家・山田紗子が設計した空間のもと、ミシュラン1つ星のフレンチレストラン「Sincere」オーナーシェフ・石井真介が、AWT BAR初のフードメニューを手がけます。また、アートウィーク東京の会期中に参加施設で展覧会を開催するアーティスト、大巻伸嗣、小林正人、三宅砂織の3名とコラボレーションしたオリジナルカクテルも提供します。
Ruinart
- F4
ルイナールは毎年メゾンのテロワールやヴィジョンを世界的アーティストと共有し作品を完成させるコラボレーションプログラム「カルト・ブランシュ」を行っています。今回のアートウィーク東京でルイナールは、2023年の「カルト・ブランシュ」参画アーティスト、エヴァ・ジョスパンの作品を展示します。
AWT VIDEO
- B4
- G4
元始、女性は太陽であった
国際的なキュレーターをゲストに迎えて、アートウィーク東京参加ギャラリーの所属作家の映像作品から構成したプログラムを上映するAWT VIDEOを、オフィシャルパートナーのSMBCグループが提供する三井住友銀行東館を会場に実施します。
今回は、スペイン出身でスイス・バーゼルを拠点に活動するチュス・マルティネスが「ジェンダー」と「自然」をテーマに選定した14作家の17作品から成るプログラム「元始、女性は太陽であった」を上映します。
AWT FOCUS
- C1
- D7
- G3
平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで
滋賀県立美術館ディレクター(館長)の保坂健二朗をアーティスティックディレクターとして迎え、64名のアーティストによる100点を超える作品を通して、日本の近現代美術を読み解くキーワードを批評的かつ親しみやすい視点から再考する展覧会「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」を開催します。
1917年に実業家の大倉喜八郎によって設立された、現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館の地上1・2階および地下1階の3フロアを会場に、物質と非物質、アートとデザイン、自然と人工といった、一見相反する概念の間に「バランス(平衡)」を求める建設的な緊張関係が、戦後から現代に至る日本において新しい表現の誕生を促してきたことを明らかにします。
2023年から始動するAWT FOCUSは、キュレーターが美術史的観点から選定した作品を通じて、近現代美術のナラティブを見直すと同時に、参加ギャラリーを介して出展作品を購入できるというユニークな企画です。
AWT FOCUSは、現代美術における既存の文脈とこれからの展開とをつなぎ、新しいアートのあり方を構築していくための実験的な試みです。それは、歴史的・社会的文脈を踏まえ、多様な観点から作品の価値を提示するという「美術館で開催される展覧会」が担ってきた役割と、目まぐるしく変容するアートマーケットの構造を掛け合わせた性質を持つものです。とりわけ、アートを購入する人々にとっては画期的かつ重要な展覧会だと言えます。ベテランのコレクターがより視座を高められるだけでなく、これからコレクターを目指すビギナーにとっては、アートのパトロンとしての長期的なビジョンを描く機会となることでしょう。
ユタカキクタケギャラリー
- G2
- 六本木
三瓶玲奈、向山喜章、田幡浩一、Nerhol、国谷隆志
SKY
田幡浩一、向山喜章、三瓶玲奈、Nerhol、国谷隆志によるグループ展「空(SKY)」を開催。古来より人は空に詩情を重ね、また移り変わるその様は、芸術、文学、音楽と、人の営みの様々な分野でインスピレーションをもたらしてきた。頭上に見える空(そら)をはじめ、空(くう)や、空間といった概念にも及ぶ、作家たちの応答を提示する。
2015年7月、六本木にて開廊。現代美術の表現形態が多様化し、美術が紡ぐ歴史の在り方も魅力を深めていく中、さらに新しい表現を切り開くアーティストの活動をサポートすることを目的として運営。絵画、写真、彫刻、映像など、同時代に制作される作品を紹介し、展覧会と併せてアーティストトークの開催や展覧会カタログ、アーティストブックの出版も行っている。
ユミコチバアソシエイツ
- G2
- 六本木
ソル・ルウィット、高松次郎
Line for Earth Project
ソル・ルウィットと高松次郎の作品を紹介する企画を開催。ルウィットは1967年に「コンセプチュアル・アートについての断章」と題されたテクストを発表し、1960年代後半当時の新たな
動向を「コンセプチュアル・アート」と命名した。また、同時期の日本で活動していた高松次郎も、概念や思考を重視する主知主義的な傾向の作品を制作していた。高松の実践は、コンセプチュアル・アートはアメリカ国内に限られた動向ではなく、世界同時多発的なものであったことを示している。
本展では、ルウィットと高松のキューヴ(立方体)を素材とした彫刻作品だけではなく、その思考の軌跡を辿るための手がかりとなるドローイングも併せて展示。60年代後半から70年代にかけて展開した両者の仕事の併行性を辿る。
1988年、マネジメントおよびプランニングオフィスとして設立。2010年、西新宿にギャラリースペースをオープン。22年、六本木の新スペースに移転。美術館やギャラリーといった美術機関での展覧会やプロジェクトを手掛けるほか、ファッション、インテリアなどにもアプローチし、ジャンルを超えたコラボレーションを実現している。高松次郎、眞板雅文、吉田克朗など歴史的に重要な物故作家のエステート運営、国際アートフェアへの出展を行うほか、作家についての歴史的な理解を促し、社会的な認知度を高めるため、評論家のテキストを掲載した研究冊子を数多く出版。また新スペースの移転と共に、芸術・美術分野以外の専門家や研究者も招き、幅広い問題を議論する場「アルスクーリア」を立ち上げた。
ウェイティングルーム
- A3
- 江戸川橋
三宅砂織
Nowhere in Blue
画像イメージの起源としての「影」に由来する反転や複数性といった事象を用いる手法で、私たちの眼差しに内在する「絵画的な像」に問いかけるような作品を手がけてきた三宅砂織の新作個展。
本展では、青写真や映像作品を中心にインスタレーションを構成する。それらは、世界的なパンデミックの経験や生成AIの普及による劇的な変化のなか、三宅が森林や庭園を歩いてみることから見出した「ランドスケープ(風景/風景画)」についての思索を反映している。
様々なメディアを横断しながら表現する最新鋭のコンテンポラリーアートを紹介することを目的に、2010年秋に恵比寿にオープン。17年秋、現在の江戸川橋・神楽坂エリアに移転。「ギャラリーは入りづらい」というイメージを一掃するために、ギャラリーの名前にもなっている「WAITINGROOM(待合室)」という性格に焦点を当てた空間づくりをし、鑑賞者とギャラリスト、アーティストのあいだに自然と会話が生まれるような雰囲気づくりに力を入れている。
小山登美夫ギャラリー
- G2
- 六本木
南谷理加
南谷理加の個展を開催。大小様々なキャンバスに油彩で描かれるペインティングには、日常の中で目にするモノや風景、動物、人物といったモチーフが、躍動感のある筆致とダイナミックな画面構成で瑞々しく描かれている。独特のユーモアを湛えたイメージは、世界の印象を焼き付けたスナップショットのようだが、「人物は色や形の入れ物にしか過ぎません」と南谷が言うように、それは絵画に描かれる空間を構成する、色彩や形態、輪郭の内と外といった、視覚的要素の実験でもある。
1996年、江東区佐賀町に開廊。2016年より六本木に拠点を移し、22年、天王洲にもスペースをオープン。開廊当初から海外アートフェアへ積極的に参加し、日本の同世代のアーティストを国内外に発信。日本における現代アートの基盤となる潮流を創出する。現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花、リチャード・タトルなどのアーティストに加え、陶芸のアーティストも紹介。国境やジャンルにとらわれず、巨匠から新たな才能まで幅広い作品を紹介し、独自の視点で現代アートマーケットのさらなる充実と拡大を目指している。
東京画廊+BTAP
- C3
- 銀座
石元泰博
写真家・石元泰博の個展。アメリカ・サンフランシスコで農業移民の家庭に生まれた石元は、第二次世界大戦中にコロラド州の日系人収容所アマチ・キャンプに収容され、そこで写真に初めて触れる。戦後は、バウハウスの伝統を受け継いだインスティテュート・オブ・デザインに入学し、写真家としてのキャリアを開始。代表作である「桂離宮」シリーズや、シカゴと東京の人物・風景をとらえた初写真集などを通じて、戦後日本の芸術界に新風を吹き込んだ。
本展では、石元が1940 年代から60 年代にかけて撮影した、東京とシカゴの風景写真を中心に構成する予定。
1950年に銀座にオープンし、2020年に70周年を迎えた日本最初の現代美術画廊。ルチオ・フォンタナ、イヴ・クライン、ジャクソン・ポロック、フリーデンスライヒ・フンデルトワッサーなど、欧米の現代美術作家をいち早く日本に紹介。さらに高松次郎、白髪一雄、岡本太郎など、日本の現代アートを牽引する作家を取り上げてきたほか、70年代から80年代にかけては金煥基、李禹煥などの韓国人作家を招いて韓国現代美術の展覧会や、当時知られていなかった中国現代美術に着目し、徐冰や蔡國強などの個展を開催した。02年には北京・大山子地区にB.T.A.P.(ビータップ)をオープン。東京と北京を拠点に日中韓を中心としたアジアの現代美術、幅広い世代・地域のアーティストを世界に発信している。
タロウナス
- G2
- 六本木
マルセル・ブロータース
コンセプチュアル・アートの牽引者として知られる、マルセル・ブロータースを、絵画、立体作品のほか、エディション作品を通して紹介する。詩人として活動を始め、シュルレアリスム美術に衝撃を受けて美術家へと転向した彼は、美術を取り巻く世界の枠組みや慣習に対する批判精神に富む絵画、彫刻、映像などを多彩な手法で制作し、現代美術の領域を拡大・進化させてきた。
1998年に江東区佐賀町に開廊し、馬喰町を経て、19年に六本木へ移転。コンセプチュアルアートの新しい潮流に注目し、国内外の作家約30名を取り扱うほか、美術館などの公共機関との協働も多数行う。所属作家は、秋吉風人、榎本耕一、サイモン・フジワラ、ライアン・ガンダー、リアム・ギリック、春木麻衣子、ホンマタカシ、ピエール・ユイグ、池田亮司、松江泰治、田島美加、津田道子、ローレンス・ウィナーなど。
タリオンギャラリー
- A4
- 目白
五嶋英門
すじがねと縁日
90年代後半よりビートメイカーとして活動を始め、映像や音楽、ドローイング、インスタレーションなど多様なメディアで制作を行う五嶋英門の個展。
19世紀末の日本では、近代化における科学と信仰の衝突・混交が起きるなど、そのイデオロギーの形成は世界でも稀な様相を呈していた。しかし、そのような文化の「暴力的な交わり」は人類史のさまざまな時間と場所で普遍的に生じる事柄でもある。
本展では、作家の出身地である茨城を起点に、歴史的な出来事、家族のこと、ある2人の女性に起きたことなどを通して、近代化する過程で生じた痕跡がいまだ人々に影響を与え続けていること、「超越的なもの」への種々の思いの現在の状態についてのいくつかの断想として示される。
2011年に谷中にて開廊し、14年に目白へ移転。美術の歴史的展開に対する批評性や、同時代の文化的動向との境界性、社会的変化との交接性を重視する一貫したディレクションに基づく展覧会を手掛ける。世代を超えて問題意識を共有するアーティストの長期的なマネジメントを行い、国内外のアートシーンへと発信している。タリオン(TALION)という言葉には、美術を取り巻く様々な人々、制度や行為、言葉や金銭が、閉塞した状況を乗り越えて、新たなつながりを紡いでいくための原理を見いだしたいという思いが込められている。 取り扱い作家は小泉圭理、友政麻理子、石川卓磨、宮下さゆり、二艘木洋行、山下拓也、飯田Jennifer桃子、髙柳恵里。
タケニナガワ
- D5
- 麻布十番
デレク・ジャーマン
映画監督、政治活動、コスチュームデザイン、舞台美術、執筆、ガーデニングなど、多方面で精力的に活動したデレク・ジャーマンの個展を開催。
1986年にHIV陽性と診断されたジャーマンは、イギリス海峡に面した海岸沿いの街・ダンジネスに移り住む。その家は原子力発電所の隣にあり、彼は引っ越しと同時期に黒いペインティングの制作を始めたのだった。ガラスの破片、写真、潤滑ゼリーの空のチューブ、そして漂流物などが厚く塗られた黒地と組み合わせたミクストメディア作品は、彼の個人的な歴史と彼の映像制作との交差点を記録している。
本展では、1986年から1991年の間に制作された黒いペインティングと併せて、彼の初めての映像作品《Electric Fairy》(1971)と《Imagining October》(1984)も展示する。
2008年東麻布に開廊、23年5月に同地の新たなスペースへ移転。戦後日本の実験的な美術の前例に倣い、現代の問題に国際的な視座を持って取り組む幅広い世代の作家をプロモーションする。13年より「Art Basel」や「Art Basel香港」に参加。近年では、アートのグローバルサウス問題に取り組むプラットフォーム「SOUTH SOUTH」や、コロナ禍において世界中のギャラリー有志で立ち上げた「Galleries Curate」、「IGA(インターナショナル・ギャラリー・アライアンス)」など数々のイニシアチブに参加し、国際的な課題にも取り組んでいる。
タカ・イシイギャラリー
- G2
- 六本木
ロザリンド・ナシャシビ
Infinity Pool
ロンドンを拠点に活動するロザリンド・ナシャシビは、絵画、映像、版画、写真まで、多様なジャンルの作品を手がけている。ナシャナビの絵画制作は2014年に拡大し始め、自作および他者の映像作品から部分的に影響を受けているという。また、映像作品においては題材や構図の選択という点で、絵画、版画、写真と非常に密接に、時には並行し連動する。
近年の絵画では、物語や戯曲を参照したり、彼女の心に浮かんだイメージがモチーフになっている。鮮やかな色彩で描かれたそれらは、記号や象徴としても機能し、絵画における表象の意味を考えさせるだろう。
1994年の開廊以降、海外の現代作家を日本に紹介すること、そして日本を代表する写真家や新進気鋭の日本人作家の作品を海外へ発信する国際的な拠点となることの2つを目標として掲げ、展覧会企画を発展させてきた。ギャラリーの基盤は写真にありながらもその企画は現代に根ざし、取り扱い作家は様々な表現方法を用いている。年8回の個展あるいはグループ展に加え、作品の記録や発信を主な目的として、展覧会図録や書籍の出版も行っている。六本木のcomplex665に位置する主要スペースのほか、amanaTIGPでは日本の戦前戦後の写真および映像作品を専門的に紹介。2023年には京都と前橋に新ギャラリーを開廊し、国内外の作家との恊働プロジェクトを企画している。また国外では香港にビューイングスペースを設け、現代美術の既存の枠組みを超えた実践を行う国際的なアーティストたちの作品を紹介している。
タグチファインアート
- B6
- 三越前
キム・テクサン
淡
韓国で展開してきた「単色画 Dansaekhwa」の第二世代を代表する作家の一人、キム・テクサンの個展「淡」を開催。
水とアクリル絵具が蒸発によってキャンバス上に残された時間の痕跡は、時間を経ることで得られる成熟や熟成という感覚や観念を見る人に与えるような色彩、柔らかで優しい色彩を備えている。
プールにキャンバスを浸す際に不規則な形状にした布を下敷きにすることで表情を与えたり、オーロラや甲虫のもつ蛍光色が新たな自然の色彩として取り入れたりするなど、表現の幅を増した最新作が並ぶ。
2001年設立、10年に日本橋本町に移転。「芸術は人間の実存の問題に関わる」という信念のもと、国際的に活動するアーティストを展覧会やアートフェアを通してプロモートしている。主な取り扱い作家は、塚本暁宣、フランク・ゲアリッツ、岩名泰岳、キム・テクサン、クリスティアーネ・レーア、中川佳宣、西川茂、レギーネ・シューマン、ミヒャエル・テンゲスなど。
シュウゴアーツ
- G2
- 六本木
小林正人
自由について
小林正人個展「自由について」を開催。本展では、4.3メートルに及ぶ大作を中心に4点の作品を発表する。新作の《画家》は、2004年にスウェーデンのテンスタ・コンストハルで開催された個展「Starry Paint」のためにつくられた作品の一部だったが、2x10メートルという巨大作品は、展覧会終了時に小林によってバラバラにカットされ、その後それらの多くは姿を変えて小さな星のような作品に生まれ変わった。本展における《画家》も、まったく新しい存在として登場するだろう。
佐谷周吾が、父・和彦の佐谷画廊での勤務を経て、2000年にシュウゴアーツをオープン。16年に六本木のスペースに移転。22年からは、天王洲にビューイングスペース兼事務所倉庫としてShugoArts Studioを稼働している。企画・展示・作品保全と売買・コンテンツ制作などにおいて、プロ意識に支えられた高い専門性を発揮することで、「美術」に寄与する存在であることを目指している。千葉正也、藤本由紀夫、イケムラレイコ、小林正人、近藤亜樹、リー・キット、丸山直文、アンジュ・ミケーレ、三嶋りつ惠、森村泰昌、小野祐次、髙畠依子、戸谷成雄、山本篤、米田知子といったアーティストたちと共に展覧会を企画開催している。アーティストの自由な表現を最大限に尊重し、美術史に新たな価値創造を加えることを目的として活動を続けている。
スカイザバスハウス
- A8
- 根津
ボスコ・ソディ
GALAXY
木材、岩、土といった自然素材を用い、展覧会が開催される土地の風土と気候を作品に反映させるボスコ・ソディ。スカイザバスハウスで5年ぶりとなる個展では、新作群の発表と共に、近年のソディの取り組みを包括して、その次なる展望を見通す統括的な内容を予定している。平面や立体で表された球体のモティーフが数多く登場し、粘土や麻、木材や鉱物といった素材が神聖さを帯びる瞬間を描き出し、空間に宇宙(ギャラクシー)そのものを示す。
都内でも古い街並みを残す台東区谷中に、1993年に創設。美術館や東京藝術大学が密集する上野からほど近く、約200年の歴史を持つ由緒ある銭湯「柏湯」を改装したギャラリー空間は、一歩中に入るとモルタルの床に白い壁面のニュートラルなホワイトキューブが広がり、高い天井から柔らかな自然光が差し込む。国内外における現代アートの潮流をつなぐ結び目として機能し、アートシーンにおいて主導的な役割を果たすことを常に心がけ、幅広い世代の多様なアーティストを輩出。こうした理念のもと、近年は若手作家の実験スペース「駒込倉庫」、作品保存の現場を展示空間へ拡張した「SCAI PARK」、現代アートシーンのさらなる交流と進展を育む企画展スペース「SCAI PIRAMIDE」の開設など、新たなビジョンを実現している。
ポエティック・スケープ
- E6
- 中目黒
山田悠
日時計の面影
山田悠が2013年から構想を始め、これまで世界各地で何度か実現されてきた《Sun of the City》は、都市空間にある既存の構造物を利用してその場所でしか機能しない日時計を制作するプロジェクト。私たちの日常生活と天体の運行を、時刻や経緯度というグローバルなシステムを介しながら結びつける。
今回の個展では、各地で実現してきたサイト・スペシフィックな日時計の再構築・再解釈の方法を探る。いくつかの方法によって移し替えられたり複製された日時計は、実物の日時計の不在を表すことを通じて世界のどこかに今もある(もしくはあった)日時計の存在を示し、離れた場所で機能しているだろう日時計の面影として提示される。
2011年、中目黒に写真専門ギャラリーとして開廊。写真をキュレーションの軸に据えながら、近年は写真以外の作品も取り扱う。ギャラリー名の「POETIC SCAPE」とは「詩的な(poetic)」と「風景(landscape)」を掛けけ合わせた言葉で、言語では明確に定義できない、しかしアーティストには確かに見えている新たな風景を人々に届けるという意味を込めている。主な取り扱い作家は、野村浩、渡部敏哉、森山大道、野村佐紀子、柿崎真子、山田悠、トレイシー・テンプルトンなど。ギャラリー奥にはストアを併設し、ギャラリーゆかりの作家の作品集や写真論に関する書籍などを販売。また、写真・平面作品の額装も行なう。
PGI
- D6
- 麻布十番
竹之内祐幸
Warp and Woof
PGIでのグループ展で「Liberty City」シリーズを発表して以来、「鴉」P.G.I(2015)、「第四の壁」PGI(2017)、「距離と深さ」Studio Staff Only / PGI(2020)と継続的に作品を発表してきた竹之内祐幸の新作を展示。都市の風景、花や草木などの自然、身の回りの何気ない日常、親しい友人たちなどを被写体とし、暗黙裡に共有されているルールに隠された物事の奥に潜む本質をあらわにしようとしてきた竹之内。彼は孤独との対峙や社会との距離の認識といった、個人が身に付けている見落とされがちな身振りを作品において浮かび上がらせ、多様性や同一性とは何かを問いかける。
1979年、写真専門ギャラリーの先駆けとして虎ノ門にフォト・ギャラリー・インターナショナルを開廊。2015年に東麻布へ移転し、ギャラリー名をPGIに変更した。アンセル・アダムス、エドワード・ウェストン、ハリー・キャラハン、エメット・ゴーウィンなど海外作家の作品を紹介。また日本からは、石元泰博、川田喜久治、奈良原一高、細江英公といった戦後日本を代表する巨匠や、三好耕三、今道子、伊藤義彦ら気鋭の写真家をキャリア初期から取り上げつつ、佐藤信太郎、新井卓、清水裕貴、平本成海など新進作家の紹介にも力を入れる。
ペロタン東京
- G2
- 六本木
ジャン=フィリップ・デローム
visage(s)
ペロタン東京では初となるジャン=フィリップ・デロームの個展を開催。デロームは、写真を介することなく被写体を直に観察することを絵画の実践とし、現代の多くの「フィギュラティヴ」な絵画とは一線を画したリプレゼンテーショナルな絵画のありようを提示している。
本展では、パリのアトリエのなかで、古典的なポーズをとったモデルたちを描いた一連の新作肖像画を発表。そこには、アトリエという管理された状況下において発生した、特定の時間に定義付けられる被写体の存在が記録されるだろう。 写実性よりも画家とモデルとの視線の交換に関心を持つデロームの新作を通して、写真発明以前の肖像画から脈々と流れる伝統を感じることができる。
1990年、フランス人ギャラリストのエマニュエル・ペロタンがパリで開廊。2012年の香港を皮切りに、ニューヨーク(2013)、ソウル(2016)、東京(2017)、上海(2018)、ドバイ(2022)、そしてソウルに2つ目のギャラリーをオープンし、23年にはロサンゼルスのギャラリースペースをオープンした。
オオタファインアーツ
- G2
- 六本木
グオリャン・タン
シンガポールの作家、グオリャン・タンの日本初個展。薄く半透明な布を支持体にし、水で薄めたアクリル絵具を用いて淡く透明感のある色を布の表面に重ねた抽象画では、布から透けて見える木枠と、絵具がつくる色の層の調和が奥行きのある空間を創出するいっぽう、それは色彩がたたえる光を際立たせるための影の役割も担っている。本展では、支持体の両面に色を施したペインティングを、自立する立体作品のようにギャラリースペースに配置。その周りを移動しながら鑑賞することで、タンが作品に刻んだ時間、作品と空間との関係性が提示される。
1994年、恵比寿にて開廊。草間彌生を含む幅広い日本人アーティストを積極的に取り扱い、現在は、絵画、映像、インスタレーション、工芸まで多様な作家・作品を紹介し、若手作家の発掘にも力を注ぐ。2012年にシンガポール、17年に上海に新スペースをオープン。歴史や地域で美術を考える視点と、東アジアから東南アジアにいたる「アジアの帯」を視野に据え、中国、シンガポール、インドネシア、インド、フィリピンなど、アジア出身の作家の企画を多数展開。アジアパシフィック地域の新たなコンテキスト創出に貢献している。
日動コンテンポラリーアート
- D1
- 六本木
ルーカス・ブレイロック
AIに弁当箱を盗まれた
アッシュビル出身でニューヨーク在住のアメリカ人アーティスト、ルーカス・ブレイロック(1978-)の日本初個展「演劇は舞台の外で起こった労働を舞台上にもたらすべき」と考えた詩人・劇作家のベルトルト・ブレヒトに大きな影響を受けたブレイロックは、大判カメラでフィルム撮影を行い、得られた画像をスキャンしてデジタル処理をすることで、写真の背後にあるプロセスを表面化させることを重要視する。その不器用な編集は、シュールでダーク、そしてコミカルなイメージに命を吹き込んでいる。「絵を描くことで世界を理解しようとする」と語るブレイロックは、メディアの限界と内在する矛盾を探り、長年にわたってその認識に挑戦し続けている。本展では、彼の重要作に加え、本展のために制作した最新作を発表。
日動画廊の新部門として2002年に設立した現代美術専門のギャラリー。国内外の新進気鋭のアーティストを紹介している。1928年の創業以来、日本に初めて西洋絵画を紹介し、革新的な企画によって文化の普及に努めてきた日動画廊の創業・開拓理念を受け継いでいる。また、15年に台北支店をオープンして以降、アジアの現代美術も積極的に紹介している。
ナンヅカアンダーグラウンド
- F8
- 原宿
ジャン・ジュリアン&ニコラ・ジュリアン
The Gathering
ジャン・ジュリアンとニコラ・ジュリアン兄弟による2人展を開催。ジャンはイラストレーターとして『New York Times』『National Geographic』、エルメスなど著名な仕事を多く残しているが、近年は精力的にキャンバス作品や立体作品を用いてのインスタレーションを手がけている。また彫刻家、音楽家、映像作家であるニコラは、とくに2005年から電子音楽を制作しており、ソロアルバム、映画、アーティストビデオ、没入型インスタレーションのサウンドトラックを制作するなど、幅広い創作活動を行なってきた
本展は、兄弟が日常的に遊んでいるカードゲーム「Magic: The Gathering(マジック:ザ・ギャザリング)」に由来し、2人が日常生活の中で発見した魔法とファンタジーを作品内に召喚することを目指すというニコラの彫刻作品のユーモアとウィットはジャンのペンティングにより広い幅を与え、いっぽうジャンのピュアな創造性は、ニコラの彫刻作品に物語性や時間軸を与えるはずだ。
2005年、渋谷に設立。デザイン、イラスト、ストリートカルチャー、ファッション、ミュージックなど、アートの周辺分野における創造性をアカデミックに扱う実験的な企画ギャラリーとして活動。同時に田名網敬一、空山基、山口はるみ、佐伯俊男といった戦後日本のアートシーンの外で評価されてきた才能を再発掘し、国際的な現代アートの舞台での紹介に努める。多くの国際的なギャラリーとも協力し、佃弘樹、三嶋章義、大平龍一、谷口真人、モリマサト、ハロシといった国内の若手および中堅作家の育成と紹介を行いながら、選り抜きの世界的アーティストと協力してグローバルなアートシーンの現在を体現している。
無人島プロダクション
- B7
- 錦糸町
風間サチコ
ニュー松島
風間サチコの個展「ニュー松島」を開催。展覧会の中核をなす「ニュー松島」は、展示会場であった石蔵の建材・野蒜石に興味を持った風間が、石の故郷である松島と奥松島をリサーチしたドローイングのシリーズ。2022年夏に宮城県石巻で開催された「リボーンアート・フェスティバル 2022」で発表され、今回はさらに新作2点が加わる予定。
長年の侵食、11年の津波と堤防の建設による景観の変化に戸惑いつつ「無常」の思想にヒントを得て制作された作品に加え、石巻・旧北上川の今と昔を重ねて見る立体視やハンコを用いて変化し続ける「のびる海岸」を描いた作品、歌枕をイメージした大型木版画が加わり、テーマに対する風間の多面的なアプローチを紹介する。
2006年高円寺で開廊。清澄白河を経て、19年に現在の墨田区江東橋に移転。現代社会や歴史に対しての鋭い観察と考察を、表現を通して可視化する作家たちのマネジメントを行う。また、作品のコンセプトに応じてギャラリー外での展覧会企画も多数行う。作家のビジョンを紹介するため、書籍やDVDなどのプロダクトも多数制作している。取り扱い作家は八谷和彦、八木良太、Chim↑Pom from Smappa!Group、風間サチコ、臼井良平、朝海陽子、田口行弘、松田修、加藤翼、小泉明郎、荒木悠。
ミサコ&ローゼン
- A5
- 大塚
竹崎和征個展
ミサコ&ローゼンでは3年ぶりとなる竹崎和征の個展。近年の竹崎は、いくつかのシリーズ絵画の中で現代の絵画のボキャブラリーの拡張を試み、伝統的な風景というメディアに取り組み続けている。
ローゼン・ジェフリーと美沙子により2006年、豊島区北大塚にオープンした現代美術ギャラリー。逐語的な表現に根ざしつつユーモアのある国内外のアーティストを紹介している。所属アーティストはリチャード・オードリッチ、有馬かおる、加賀美健、ダーン・ファンゴールデン、トレバー・シミズ、ジョシュ・ブランド、ファーガス・フィーリー、マヤ・ヒュイット、廣直高、ネイサン・ヒルデン、題府基之、高橋尚愛、南川史門、持塚三樹、茂木綾子、森本美絵、奥村雄樹など多数の作家を紹介している。
ミサシンギャラリー
- D4
- 広尾
彦坂尚嘉
PWP: Practice by Wood Painting
美術表現の制度そのものを根元から問い直し、1970 年代以降の日本のコンセプチュアリズムを主導したアーティスト、彦坂尚嘉の個展。厚み・長さ・幅が異なる形状の木の支持体の上に、透明絵具による多彩な表皮やフラクタルなかたちが特徴的な抽象画が描かれた「プラクティス・バイ・ウッド・ペインティング」シリーズに加え、近年、彦坂のスタジオで発見された1980年から90年代の作品群を紹介する。
2010年11月に港区白金の元鉄工所の建物にオープン。18年8月、大使館が多く立ち並ぶ閑静な住宅地、南麻布へ移転。アートの垣根を越え、建築や演劇など異なるジャンルと関連性や可能性を追求し、第一線で活躍するアーティストの歴史的な位置付けを行っていくことを目指す。また、1960年代から70年代の日本のコンセプチュアリズムに焦点を当て、戦後の日本美術に対する新たな洞察、分析から展示を行い、作品の再評価へつなげている。
MEM
- E3
- 恵比寿
北山善夫展|歴史=理性・感情
北山善夫による新作個展。粘土でかたちづくった人形を一体ずつ大判の鳥の子紙にロットリングで描きとった新作「歴史=理性・感情」を展示する。それらの人形は、描いた後に壊され、また新しい人形が作られるというプロセスを経て、画面の隅から隅までを埋め、誕生から死までの人間の振る舞いを戯画化したような行為として提示される。同作は「偶像図」シリーズの最新作だが、本展では並行して制作されたオールオーバーの抽象画シリーズ「宇宙図」も展示する。この二つのシリーズは北山の絵画制作において両輪をなし、果てしない命の連鎖の果てに自分がこの世に誕生した意味を繰り返し問いかけるだろう。
本展は二部構成で開催し、10月28日からの第二部では彫刻作品の新作を中心に展示する。
MEM(Multiply Encoded Messages)は、1997年大阪・四天王寺で設立。2010年に恵比寿のナディッフアパートに移転、現在に至る。森村泰昌、石原友明、松井智惠をはじめとする80年代に台頭した関西の代表的作家の紹介を中心に出発し、同時代の作家と共に彼らの作品が初めて発表される現場を共同でつくり上げ、長期的にアーティストの仕事をサポートしている。戦前・戦後初期に活躍した近代期の作家たちの仕事を調査し、当時の社会との関係の中でどのように作品が生まれ、変化・発展していったか、美術史や写真史の中でどのように位置付けられたかを検証している。これらの調査資料のアーカイブは、ギャラリーのウェブサイトなどで公開している。
マホクボタギャラリー
- F7
- 原宿
小笠原美環
Himmel
ドイツ・ハンブルグを拠点に、静謐で力強い絵画を制作するペインター・小笠原美環の個展を開催。小笠原の絵画では、光や影、カーテンを揺らす風や室内の空気などの非物質的な題材をメタファーとして用い、人間の精神の状態や知性の深淵が表現される。ドイツ語では「Himmel」、英語では「Heaven」と題された本展は、作家が個人的な喪失をきっかけとして昨年から取り組んできた「空」を主題にした作品群で構成される。
2016年3月、原宿と青山が重なる東京の文化的クロスポイントとして神宮前にオープン。スタート時より、ジェンダーの問題に着目して制作するアーティストの作品を紹介しているほか、近年はアートを鑑賞する際に人間の脳に何が起きているのかという視点から、認知心理学的なアプローチを実践するアーティストに注目。加えて、時代や場所を超えた普遍的なナラティブを軸とし、人間の創造の歴史や叡智の豊かさを詩的に捉える表現者達の作品も紹介している。日常においてアートに触れ、アートと暮らすことで人生にどのように豊かな化学反応が起こるのか。国内外の優れたアーティストの展覧会を通し、鑑賞後も強く記憶に残り、個人の思考のきっかけや探求へと広がっていくような開かれた実験の場を目指している。
リーサヤ
- E7
- 目黒
金光男
どこかしらの雰囲気
金沢21世紀美術館などの国内美術館や台湾での発表など国内外で活躍する金光男は、シルクスクリーンの技法を応用し、蝋を塗ったパネルにイメージを定着させた作品を制作する。転写されたイメージにあえて熱を加えることで溶けて崩れた状態で固められた作品は、外国人として日本に生まれ育った、自身の社会的な不安定さや曖昧な状況を投影している。
本展では、作家として、父として奔走する日々の営みを通し、他者との関わりをテーマにした新作群を発表。
ディレクターの李沙耶が2019年10月に設立した現代美術を扱うギャラリー。独自の表現を探求する若手アーティストを積極的に紹介。また同世代の様々なジャンルのクリエイターと共闘し、現代における表現の可能性について探り続けている。取り扱い作家に、田中秀介、村松佑樹、金光男、二藤健人、高橋銑、宮田雪乃、安藤晶子、須賀悠介。
コタロウヌカガ
- G2
- 六本木
カンディダ・ヘーファー
Reflections of Spaces - Spaces of Reflection
空間への反射 - 反射の空間
ドイツ・ケルンを拠点に活動する写真家カンディダ・ヘーファーの個展「Reflections of Spaces - Spaces of Reflection 空間への反射 - 反射の空間」を開催。ヘーファーにとってKOTARO NUKAGAでの初個展となる本展では、代表的なシリーズである「Library」を中⼼に据え、「場所」の概念を通じて空間における⼒学を露わにし、その反映による新鮮なリアリズムの視点を提⽰する。
また、会期中にはNUKAGA GALLERYで桂ゆきの特別展を実施する。
会期:2023年10月10日(火)–12月4日(月)10:00-18:00(土日祝休廊)
会場:中央区銀座2-3-2 3F
2018年に新たな現代アートの中心地として注目される天王洲のTERRADA Art Complexにギャラリーをオープン。21年には異文化が交差し多様な情報が発信される六本木に2つ目のスペースを設けた。国内外の先鋭的なアーティストと共に独自性の高いギャラリープログラムを展開。国内外の美術機関やコレクターなど、アートのエコシステムを構成する各コンポーネントと連動し、積極的にアーティストの活動を支援しつつ、既存の枠組みを超えた試みやプロジェクトを推進している。アートと社会の曖昧な関係性の中で、アートを成立させる歴史的、文化的、科学的、美学的な文脈にアプローチし、過去を読み解き、今を捉え直し、未来について思索している。
コウサクカネチカ
- C2
- 天王洲
舘鼻則孝
Syncretism
舘鼻則孝にとって同ギャラリーでの9度目の個展となる「Syncretism」を開催。今回、舘鼻は日本文化を現代の視点から再考することで得られた文化的な価値観が反映された作品を展示。とりわけ、中心的な作品となる聖龕(せいがん)型の絵画《Descending Painting (Double Doors)》では、「神仏習合」における「二項同体」という方法的概念に焦点を当てる。本展で作家があらためて掘り下げようとしているのは、「二項同体」という概念的な価値観であり、⻄洋における「二項対立」という概念に対する、東洋的でありつつ、さらに日本独自に醸成されたものだろう。
2017年3月に天王洲のTERRADA Art Complexにオープン。日本国内の現代アートを再定義する新世代に属するギャラリーとして、既存の枠にとらわれない新しい表現を行い、海外のアートシーンでも高く評価される国内作家や注目すべき海外作家の展覧会を企画している。取り扱い作家は、青木豊、沖潤子、桑田卓郎、佐藤允、鈴木親、舘鼻則孝、fumiko imano。
ケンナカハシ
- F9
- 新宿
井原信次
1111
男性の中にある美を描く画家・井原信次による個展。長年生活を共にしてきた飼い猫が亡くなった2022年11月11日以来、花を手向けるように描いてきた22枚のペインティング《Lay Flowers》を中心に新作を発表。両手で優しく持った花や猫じゃらしを、微細な宝石を一粒一粒置いていくように、緻密な筆遣いで描く。
2014年設立。社会におけるアートと人との関係や対話について、新たな理解を追求するための人間的探求を行い、拡大する集合的歴史の文脈において、現在のグローバル社会の様々な問題に注目し実践を続けている。主な展覧会に原田裕規「Waiting for」(2022)、松下真理子「居住不可能として追放された土地」(2020)、佐藤雅晴「死神先生」(2019)、森栄喜「Letter to My Son」(2018)など。
カヨコユウキ
- A7
- 駒込
櫃田伸也
◯△▢
愛知県立芸術大学および東京藝術大学で教鞭を取った櫃田伸也の個展を開催。彼が制作の出発点としたのは、空き地、水路、フェンス、コンクリートの壁、植物など、ごくありふれた身の周りの風景。それらを描いた絵画には、画面のなかに消失点を定めず、視線を分割する斜線のあいだを風が吹き抜けるような感覚がある。櫃田は、風景を計測可能で自明なモチーフとして扱うのではなく、断片的に知覚され「通り過ぎる」あるいは「通り過ぎた」ものとして、様々な場所や時間のブリコラージュによって描いたのだ。
2011年、オフィスとビューイングルームを設立。15年、東京の下町の雰囲気と歴史ある六義園が隣接する駒込に移転。古い木造倉庫を改装し、横長の大きな窓から柔らかく自然光が降り注ぐギャラリースペースを新設、現代アートに関する展覧会などの企画やアーティストマネジメントを行う。取り扱い作家は、櫃田伸也、髙木大地、富田正宣、エヴェリン・タオチェン・ワン、大野綾子、大田黒衣美、諏訪未知、今村洋平、利部志穂、井出賢嗣、松下和暉など。国際的なアートフェアへも出展しているほか、ドイツ・ケルンにてギャラリー「ECHO」を共同運営している。個人的な体験や経験、そこから生まれた謎や問いを注意深く検証し、編み出した方法で作品を制作する作家とコラボレーションを行う。日常生活から得られるさまざまな素材やイメージを扱い、価値観の多様化や社会の分断が進む現代社会において共生するためのヒントとなるような作品を紹介している。
カナカワニシギャラリー
- B8
- 清澄白河
藤元明
Mineralization
社会現象や環境問題をモチーフに、多様なメディアで展示やアートプロジェクトを展開する藤元明。今回は、2019年より取り組み続けている「海ゴミ」シリーズの最新作を発表する。ビーチへと世界中から漂着して打ち上げられた様々なプラスチック製品を仲間たちと共に拾い集め、ヒートプレスをかけることで膨大な時間とエネルギーの鉱物化(Mineralization)として可視化する同作は、地球規模の出口なき問題を、現象のひとつとして俯瞰的に提示する。
あらゆる現象学的メディウムを用い、普遍的なモチーフに新たな解釈を提示する現代美術プライマリー作品を扱うギャラリー。取り扱い作家は、若手日本人作家から国際芸術祭で活躍する海外作家まで幅広い。2014年にアートオフィス設立、15年よりギャラリー開廊、17年春に清澄白河に移転(内装・外装は永山祐子が建築設計)。18年春、写真専門のサテライトギャラリーとしてKANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYを西麻布に移転オープン。国内外の現代美術アートフェアに積極的に参加しながら、2つのギャラリースペースにて個展やグループ展を定期的に企画。
カイカイキキギャラリー
- D3
- 広尾
ナカザワショーコ
Harmony
ナカザワショーコによる個展「Harmony」を開催。グラフィックデザイナーやイラストレーターとしてキャリアを開始し、インディーズソフビ怪獣の制作で根強いファンを生んできたナカザワは、今回の大型個展で作家オリジナルのアイコニックな怪獣バイロンやシードラス、そして作家の内面を投影したような少女が登場するペインティングなど20点以上もの新作絵画を制作。そのなかには高さ3メートル、幅6メートルの大作も含まれる予定。
アーティストの村上隆により設立され、村上がマネジメントするアーティストを日本で紹介する場として2008年にオープン。アーティストのマネジメントと作品販売によりアートの社会的価値の創造を行うほか、海外の著名なアーティストに東京での展示の機会を提供し、日本のアートシーン全体の発展に貢献している。主な所属アーティストに、Mr.、タカノ綾、青島千穂、ob、くらやえみ、MADSAKI、TENGAone、大谷工作室、村田森など。海外からはKasing Lung、FUTURAらを招く。
ハギワラプロジェクツ
- B2
- 清澄白河
寺内曜子
1979-98の20年間ロンドン在住で作家活動。1998年帰国。「いかに私たちの世界の理解の仕方が、対立や分断を生んでいるか」との考えのもと、内/外、表/裏等の対立、区別関係が、実は言葉の上だけの存在であることを具体的に証明する彫刻や、私たちはそもそも世界の全体を見ることはできず、部分しか見えないことを経験する場としてのインスタレーションを制作・発表している。近年の個展に、「寺内曜子 パンゲア」 豊田市美術館(2021年、愛知)、「寺内曜子展 満ち潮 引き潮」ふじ・紙のアートミュージアム (2021年、静岡)、「スタンディング・ポイント1 寺内曜子」慶應義塾大学アートセンター(2017年、東京)、「寺内曜子の赤と青」かんらん舎(2010年、東京)など。
2013年に西新宿に開廊、21年3月江東区に移転。国内外の若手作家を中心に絵画、彫刻、写真など多ジャンルの展覧会を企画。また、外部のキュレーションも積極的に取り入れ、日本のアートシーンの構築に取り組んでいる。主な取り扱い作家に、土肥美穂、早川祐太、今井俊介、地主麻衣子、城戸保、額田宣彦、ザック・プレコップ、ジョアンナ・ピオトロフスカなど。
フイギユア
- A5
- 大塚
FIG. 9. IMMEDIACY
リサ・ラピンスキー、丹羽海子、J・パーカー・バレンタイン、岡田理によるグループ展「Immediacy」を開催する。視覚的および認知的、時間的観点を取り囲むように、Immediacy (即時性)の概念は、芸術作品の体験に関する様々な観点を呼び起こす。即時性という用語が、いかなる仲介媒体も取り払られた直接的な経験ということを意味する場合、作品制作と鑑賞が物質世界での遭遇を前提として行われるものである以上、そのような状態に至ることはあり得ないことのように思える。しかし、芸術鑑賞における即時性の状態について考えることは、具体的な鑑賞経験とは何か、という基本的でありかつ複雑な問いを私たちに投げかける。
四人の展示作家は、それぞれ異なる関心をもとに独自のアプローチで活動を展開しているが、物質性やプロセスに対する鋭い感度をもった作品を発表してきた点において共通している。工芸、メディア、記号論の言語を組み込んだ形式的に複雑な立体作品で知られるリサ・ラピンスキーの独特の彫刻言語は、空間の壁一面を覆う壁紙作品と、額装されたスクリーンプリント作品の 二つの作品で構成される展示作品にも表れている。本質的にドローイングに関連した実践に基づいた作品を発表してきたJ. パーカー バレンタインは、特定の素材を用いた長期的に行われる実験的な制作方法という意味で「ドローイング」における行為と実践の側面が顕著に表れた作品を展示。丹羽海子の作品は、様々な実体験、記憶、空想らが複雑に絡み合うことと、多種多様な素材と技法による彫刻作品とのパラレルが、物事の境界を曖昧にし、分類と定量化という支配的な方法論に対するアンチテーゼとして捉えられる。岡田理の作品は、有形無形のナラティブ構造の間を漂い、セラミックという物質的実体を持ちつつも断片的な印象を与える。「展覧会」を、第二のミディウムとして機能させるか、機能させないか、ということについて半ば即時的に制作された展覧会を通じて考える。
2017年に北大塚にオープンしたアーティストランスペースおよびプロジェクト。国内外の幅広いアーティストの展覧会などを北大塚のスペースで企画開催するほか、アーティストブックなどの製作と出版も行う。これまでの主な展覧会に、デヴィッド・オストロフスキー「空っぽの水(反ドローイング)」(2023)、XYZcollectiveとの共同企画による丹羽海子 「靴の中の暮らし(幻影コオロギ)」(2023)、「Drawing Fever I: Narrative, on-going 」(2022)、岡田理、Galerie Max Mayerとの共同企画によるニコラス・グァニーニ「Interference」(2022、2021)、Fitzpatrick Gallery、The Performance Agencyとの共催によるハナ・ワインバーガー「wedidntwanttoleave.live」(2020)、COBRA「THE MUSEUM」(2019)、岡田理「Slender and Long My Whistle」(2018)など。
ファーガス・マカフリー
- F6
- 表参道
リチャード・セラ
Circle, Diamond, Triangle
板金を使った体感的な彫刻作品で知られるリチャード・セラの個展を開催。本展では、壁に設置されるインスタレーション・ドローイングを展示。また、開催に合わせ書籍「Richard Serra / Hal Foster: Conversations About Sculpture(リチャード・セラ/ハル・フォスター 彫刻にまつわる対話)」の日本語訳版も出版する。
ファーガス・マカフリーは2006年の設立以来、アメリカ、日本、ヨーロッパの戦後および現代美術を世界に向け紹介。10年以上にわたり24名以上の作家、エステイトとともに幅広いプログラムを展開してきた。日本戦後美術、気鋭のヨーロッパ美術の国際的な評価を確立する上で中心的な役割を担う。ニューヨーク、東京、サン・バルテルミー島にギャラリースペースを持つ。東京のギャラリーは18年3月のロバート・ライマン展でオープンし、20年以降はジャスパー・ジョーンズ、リチャード・セラ、久保田成子、白髪一雄、田中泯、キャロリー・シュニーマン、マシュー・バーニーらによる展覧会を開催している。
ブラム
- F3
- 原宿
ハ・ジョンヒョン
韓国における「単色画」の作家の一人として知られるハ・ジョンヒョンの個展。今回は、長年取り組んでいる「接合」シリーズから8点の新作ペインティングを発表。1974年に開始された同シリーズは、キャンバスの裏側から粘性のある油絵具を押し出し、表面にはみ出した絵具のフィールドをブラシで塗りつぶしたり削ったりすることで、作品を構成する素材の本質を露出させた、抽象的なコンポジションの絵画作品。この独自の背圧手法を用い、ハは絵具とキャンバスの物質的な融合を探求。水墨画の伝統から距離を置き、多種多様な行為と手法によって、水墨画と油絵、絵画と彫刻、対象と鑑賞者の二元的な区別に疑問を投げかけている。
ティム・ブラムとジェフ・ポーによって、サンタモニカで1994年設立。2014年、東京のスペースをオープン。29年間におよぶアーティストたちとの協働は、新しい言説を生み出す試みとなり、現代美術の新たな潮流を生んでいる。特に10年以降は「もの派」、韓国のモノクローム抽象画「単色画」、戦後ヨーロッパの「CoBrA」、ブラジルのモダニズムといった美術史における重要な動向を検証する美術館規模の展覧会を数多く開催してきた。出版事業、パブリックプログラムの開催、オンラインプラットホーム「Broadcasts」を通して、実空間にとどまらない活動にも積極的に取り組む。
スノーコンテンポラリー
- E4
- 六本木
浅野友理子
食文化や植物の利用について様々な土地を訪ね、出会った人々とのやりとりや自身の体験をなぞり、その土地で受け継がれてきたものを記録するように絵画を制作している浅野友理子の個展。それらの作品は、単なる植物画にとどまらず、土地に⻑く伝わる知恵や知識に着目し、人と自然との共生や、人間以外の生き物に対する視点など、きわめて現代的な問題意識を内包している。
キュレーターの窪田研二と石水美冬により、アーティストのマネジメントオフィスとして2010年に東京とシンガポールでスタートし、16年に西麻布に移転。絵画や彫刻を中心に扱い、国内外のアーティストによる創造的でカッティングエッジな展覧会を数多く開催している。ギャラリーでの展覧会以外にも、多彩な場においてプロジェクトやキュレーションを行なっており、新たな時代を切り開くアーティストを多数紹介している。主な取り扱い作家は河口龍夫、山川冬樹、雨宮庸介、HITOTZUKI、布施琳太郎、SWOON、デヴィッド・ステンベックなど。
ミヅマアートギャラリー
- A2
- 飯田橋
天野喜孝
青天
アニメのキャラクターデザインや挿画、ビデオゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズのキャラクターデザインで知られる天野喜孝。活動の中心をファインアートに移して以降は、世界各地の美術館やギャラリーで展覧会を数多く開催。作品の制作過程や素顔に迫る初のドキュメンタリー映画(2024年以降公開予定)の撮影が発表されるなど、いっそうの注目が集まっている。
「青天」と題された本展は、青を基調とした油彩やアクリル、釉薬、箔などの素材で表現された多様な作品によって構成。海や空などの自然、沈静、平和、知性、高貴、若さなど広範に及ぶイメージを連想させる青。天野の独自な感覚による豊かな青の表現を見ることができる。
エグゼクティブディレクターの三潴末雄により、1994年に東京にて開廊。時代ごとのスタイルに捉われない独自の感性を持った日本およびアジアの作家を中心に、国際的なアートシーンに紹介している。アジアにおけるコンテンポラリーアートマーケットの発展と拡大化に伴い、2008年に北京、12年にシンガポールのギルマンバラックスにMizuma Galleryを開廊。14年にはインドネシアのジョグジャカルタに日本のアーティストと現地アーティストたちの交流の場としてレジデンススペース「ルマ・キジャン・ミヅマ」を開設。アートバーゼル香港やアーモリーショーなどの国際的なアートフェアにも積極的に参加し、国際的に活躍する作家を多数輩出している。
フォーシックスフォーナイン
- A6
- 巣鴨
石橋征子
2023年11月2日より、ペインターである石橋征子の東京での初個展を開催。石橋は15年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートを修了後、ロンドンを拠点に活動。主な展覧会にセバスチャン・グラッドストーン(ロサンゼルス)、Schwabinggrad(ミュンヘン)、セックス美術館 (ニューヨーク)、V.Oキュレーションズ(ロンドン)など。本展では新作絵画を発表予定。
アーティストの小林優平、清水将吾、高見澤ゆうが運営するキュレーション・プロジェクト兼ギャラリーとして、2017年巣鴨でオープン。東京のアートシーンに向けて運営者である3人の作品の展示や、新進の国際的なアーティストとの展覧会の企画に重点を置いている。また国内外のオフサイトプロジェクトにも参加し、東京を拠点とするアーティストを国際シーンに向けて紹介している。最近の展覧会に「チャールズ・マンソン、ティモシー・リアリー、ザ・ラッツ・オブNIMH」(2022)、「コントラストッシモ」(2020)、エラ・フレックとタビサ・スタインバーグ(2020)、アレックス・ドランとジャスパー・スピケロ(2019)、NADAマイアミプロジェクトブースのプレゼンテーション(2018–21)など。
ギャラリー小柳
- C6
- 銀座
熊谷亜莉沙
神はお許しになられるらしい
熊谷亜莉沙は、自身のバックグラウンドが色濃く反映された作品を発表し、富裕と貧困、生と死、愛と憎しみという表裏一体の事象に焦点を当ててきた。家業のブティックで取り扱っていたヴェルサーチのシャツや、絵画を志すきっかけとなったキリストの磔刑図など、カトリックにまつわるものから図らずも影響を受けてきた熊谷は、「美と権力」や「暴力と祈り」を同時に孕むその有様に自身の家族像を重ね合わる。
ギャラリー小柳で3回目となる本展では、パリと日本の教会に通い、より普遍的かつ私的な「美と権力・暴力と祈り」を探りながら制作に挑んだ絵画と、熊谷が綴った詩をまとめた詩集を紹介。
1852年(嘉永5年)創業の京橋勧工場を前身とし、その中の陶器部門を「小柳商店」として明治から昭和にわたって継続させ、87年に小柳商店美術部として現代陶芸ギャラリーを開廊。95年、現在の現代美術画廊を銀座で開業する。2016年には杉本博司のデザインで、ギャラリースペースをリニューアルオープンした。プライマリーギャラリーとして、杉本博司、ソフィ・カル、マルレーネ・デュマス、クリスチャン・マークレー、ミヒャエル・ボレマンス、マーク・マンダース、トーマス・ルフ、須田悦弘、束芋など国内外の作家を扱うほか、コミッションワークのプロジェクトも手掛ける。
ワタリウム美術館
- F7
- 外苑前
トルコ共和国建国100周年記念
山田寅次郎展 茶人、トルコと日本をつなぐ
1890年、24歳の若さでオスマン帝国に渡り、トルコと日本の文化を結んだ山田寅次郎。彼は当時のオスマン帝国皇帝に謁見し、皇帝のアートディレクターとしてトプカプ宮殿内の東洋美術の分類を担当。またオスマン帝国の文化・生活様式を伝える『土耳古畫觀』の執筆や、トルコを訪問した建築家・伊東忠太やジャーナリスト・徳富蘇峰らのサポートをするなど、文化的な活動も精力的に行なった。本展では、そんな寅次郎の活動をさまざまなテーマから紹介する。
1990年9月に開館。「態度が形になるとき」を企画したハラルド・ゼーマンをはじめ、ヤン・フート、ジャン=ユベール・マルタンといった国際的なキュレーターを日本に招き、数々の展覧会を行ってきた。現在は年間3、4本の企画展を開催し、現代美術、日本文化思想、建築など多岐にわたるテーマを扱っている。また、展覧会をより深く理解してもらうための様々なイベントを開催しているのも大きな特徴。設計はスイス人建築家のマリオ・ボッタが担当した。
東京都写真美術館
- E2
- 恵比寿
見るまえに跳べ 日本の新進作家vol.20
即興 ホンマタカシ
風景論以後
今年でシリーズ20回目を迎える新進作家展「見るまえに跳べ 日本の新進作家 vol.20」では、うつゆみこ、淵上裕太、星玄人、夢無子、山上新平の5名の作家を取り上げ、不確かな時代を生き抜くための原動力を探る。
「即興 ホンマタカシ」は日本の美術館で約10年ぶりとなる写真家・ホンマタカシの個展。〈THE NARCISSISTIC CITY〉シリーズをはじめ、この10年あまりに制作された作品を中心に作家の今に迫る。
「風景論以後」では、風景論をめぐる日本の写真映像表現を当時の資料を交えて歴史的に再考するとともに、今日の現代作家にいたるまでの写真映像と風景の変容を、コレクションを中心に検証する。
「写真・映像」を専門とする、1995年開館の美術館。3万7,312点(2023年3月時点)の収蔵作品からテーマに沿ってセレクトした収蔵展、国内外の優れた作品を独自の切り口で紹介する企画展など、豊かな専門性と厚みを活かした展覧会を3つの展示室で開催。1階ホールでは、「アート&ヒューマン」をテーマに、良質な映画・映像作品の上映も行う。
東京オペラシティ アートギャラリー
- F1
- 初台
石川真生
私に何ができるか
沖縄を拠点に、同地をめぐる人々に密着したポートレート作品を中心に制作する石川真生(1953–)の実像に迫る、本格的な個展。ポートレートを中心に、被写体となる人々に耳を傾け、立場を越えて取材することで引き出されるリアルな人間像は、沖縄の現実を生々しい切り口で暴き出す。現在も新たな制作に向けて取材を続けている石川による総数約160余点の写真を通して、作家が築き上げてきた独自の眼差しを紹介する。
都市のライフ・スタイルに合わせた都市型美術館として、1999年に複合文化施設東京オペラシティビル内に開館。国内外のアーティストたちの作品を、絵画、彫刻、写真、映像、デザイン、ファッション、建築など多岐にわたるテーマの企画展を通して紹介。コレクター・寺田小太郎の寄贈による寺田コレクションでは、日本を代表する抽象画家、難波田龍起・史男父子の作品をはじめとする戦後の美術作品を収蔵している。また、国内の若手作家を紹介するシリーズとして「project N」を企画展と同時開催している。
東京都庭園美術館
- D2
- E1
- 目黒
装飾の庭
朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術
東京都内にありながら広大な自然を有する東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)。その開館40周年を記念して開催される本展では「庭園」をキーワードに、同館の建築や空間について読み解くと共に、「庭園芸術」という概念が初めて独立的に扱われた1925年のアール・デコ博覧会を中心とする両大戦間期のフランスの近代庭園を巡る動向に着目。
古典主義・エキゾティシズム・キュビスム的要素を取り入れて展開していった様態について、絵画や彫刻、工芸、版画、写真、文献資料など、約120点の作品から紹介する。
1933年に朝香宮邸として建てられ、アール・デコ様式の建物の空間と緑豊かな庭園が調和した美術館として83年に開館。2014年には杉本博司を設計アドバイザーに迎えた新館が完成。またその翌年には、本館、正門、茶室などが国の重要文化財に指定された。隣接した庭園も宮邸時代の面影を残し、芝生で覆われた開放感のある庭と、築山と池を備え起伏に富んだ日本庭園は、桜や紅葉など四季折々の変化を楽しめる。装飾芸術の観点から美術作品を紹介する特色のある展覧会を開催すると共に、庭園の活用や様々な教育普及事業に取り組み、文化的な都市空間の形成と、あらゆる鑑賞者に開かれた美術館の実現を目指している。
資生堂ギャラリー
- C3
- 銀座
第八次椿会 ツバキカイ 8 このあたらしい世界 “ただ、いま、ここ”
第二次世界大戦で一時中断していた資生堂ギャラリーの活動を、1947年に再開するにあたり誕生したグループ展である「椿会」。時代と共にメンバーを入れ替えながら、資生堂ギャラリーを代表する展覧会として継続。2021年にスタートした第八次椿会(今年が活動最終年)は、同時代のアーティストたちと共に、不確かさの中の豊かさについて考えてきた。
1919年オープン。現存する日本最古の画廊とも言われ、関東大震災や戦争、建物の改築による中断期を除き、「新しい美の発見と創造」に継続的に取り組み、3,100回以上の展覧会を重ねて日本の芸術文化の振興に寄与。同ギャラリーを作品発表の場として、後に日本美術史に大きな足跡を残した作家も多い。90年代からは現代美術に主軸を定め、前衛性と純粋性を兼ね備えた同時代の表現を積極的に紹介している。5メートルを超える天井高を持つ空間は、様々な表現を可能にする場として、海外の作家からも愛されている。
東京国立近代美術館
- A1
- B5
- 竹橋
生誕120年 棟方志功展
メイキング・オブ・ムナカタ
1956年に参加したヴェネチア・ビエンナーレ版画部門で日本人として初めて国際版画大賞を受賞するなど、国際的な評価を得た版画家・棟方志功(1903-75)の回顧展。棟方が居住し、あるいは創作の拠点とした青森、東京、富山の三つの地域は、彼の芸術家としての形成に大きな影響を与えた。生誕120年を記念して開催する本展では、富山県美術館、青森県立美術館、東京国立近代美術館が協力し、棟方と各地域の関わりを軸に、板画、倭画、油彩画といった様々な領域を横断しながら、本の装丁や挿絵、包装紙などのデザイン、映画・テレビ・ラジオ出演に至るまで、時代特有の「メディア」を縦横無尽に駆け抜けた多彩な活動を紹介。棟方志功がいかなる芸術家であったのかを再考する。
皇居のほど近くに建つ、日本で最初の国立美術館。近現代の多彩な企画展に加え、1万3,000点を超える国内最大級のコレクションでは、横山大観、菱田春草、岸田劉生らの重要文化財を含む19世紀末から現代までの幅広いジャンルにわたる日本美術の名作、海外作品に触れられる。日本が急速な近代化を成し遂げた激動の時代に日本の伝統的な美意識と西洋美術という異文化のあいだで模索した芸術家たちの歩みを通覧できる。会期ごとに選りすぐりの約200点を展示する所蔵作品展「MOMATコレクション」では、100年を超える日本美術の歴史を概観できる。また、対話による鑑賞プログラム「所蔵品ガイド」や、年に数回、様々なテーマに基づいて国内外の美術作品を紹介する企画展を実施。展望休憩室「眺めのよい部屋」からの眺望に加え、周辺には北の丸公園や千鳥ヶ淵など自然豊かな環境が広がっており、美術館と併せた散策も楽しめる。
東京都現代美術館
- B1
- 清澄白河
デイヴィッド・ホックニー展
現代で最も革新的な画家の一人、デイヴィッド・ホックニー(1937–)の日本では27年ぶりとなる大規模個展。イギリス出身のホックニーは60年以上にわたり、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表し続けてきた。本展では、イギリス各地とロサンゼルスで制作された多数の代表作に加えて、近年の風景画の傑作「春の到来」シリーズやCOVID-19によるロックダウン中にiPadで描かれた全長90メートルにもおよぶ新作など、120点余りの作品を通してホックニーの世界を体感できる機会となるだろう。
約5,700点の収蔵作品を活かし、現代美術の流れを展望できるコレクション展示や大規模な国際展をはじめとする特色ある企画展示を行う美術館。絵画、彫刻、ファッション、建築、デザイン、アニメーションなど、幅広いジャンルの展覧会を開催している。美術図書室の蔵書は約27万冊をそろえ、美術に関する情報提供と教育普及を目的としたワークショップや各種講座、講演会なども行う。館内にはレストラン、カフェ&ラウンジ、ミュージアムショップも併設。
銀座メゾンエルメス フォーラム
- C7
- 銀座
エコロジー:循環をめぐるダイアローグ
ダイアローグ1:「新たな生」崔在銀
アートにおけるエコロジーの実践を問うべく、エコロジーの概念を広義の「循環するエネルギーの有り様」としてとらえ、紹介するプロジェクト。個展とグループ展(2024年2月開催)の二部形式で構成される本展は、森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」の関連企画でもある。
今回開催する「ダイアローグ1『新たな生』」では、80年代より一貫して環境や自然との対話を継続してきた崔在銀の40年間にわたる実践を個展形式で振り返る。新作と旧作を織り交ぜ、静かに迫る緊急事態への警告と静かな詩情、生に潜在する暴力と美の振れ幅のなかで、自然との理想的な共存関係を探り、希望を探求する。
訪れる人々を迎える「メゾン(家)」というコンセプトで2001年に竣工。ランタンの灯りを思わせるガラスブロックを使った設計は 、建築家レンゾ・ピアノによるもの。8、9階にはエルメス財団の運営するアート・ギャラリー「フォーラム」を設置し、現代を生きるアーティストたちの創造や対話を、毎年3、4本の展覧会を通じて紹介している。自然光が注ぎ込む特徴的な展示空間はアーティストたちのインスピレーションの源となり、実験的な展覧会を生み出している。
国立新美術館
- D1
- 六本木
大巻伸嗣
Interface of Being 真空のゆらぎ
空間と時間を抽出し、体感的で大規模なインスタレーションで注目されてきた美術家・大巻伸嗣。彼の作品に足を踏み入れる者は、身体と感覚を揺さぶられ、この世界にある様々な事象、そして我が身の存在についての新たな視点を投げかけられるだろう。本展では、天井高8メートルの大空間を活かした新たなインスタレーションを発表する。
2007年、独立行政法人国立美術館に属する5番目の施設として開館。以来、国内最大級の展示スペースを活かした多彩な展覧会の開催や、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、様々な教育普及プログラムの実施を通して、人々が多様な芸術表現を体験し、学び、互いの価値観を認め合うことのできるアートセンターとして活動している。「森の中の美術館」をコンセプトに黒川紀章らによって設計された建物は、波のようにうねるガラスカーテンウォールが美しい曲線を描き、円錐形の正面入口と共に個性的な外観をつくり出している。吹き抜けの1階ロビーからは四季折々の眺めを楽しむことができ、レストランやカフェ、ミュージアムショップなどの付属施設も充実。
森美術館
- D8
- 六本木
森美術館開館20周年記念展
私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために
世界共通の課題である環境危機に、現代アートはどのように向き合っているだろうか? 本展では、ピエール・ユイグ、アナ・メンディエータ、中西夏之、アピチャッポン・ウィーラセタクンなど国内外のアーティスト35人による歴史的な作品から本展のための新作まで、多彩な表現を4つの章で紹介。人間中心主義的な視点のみならず、地球という惑星を大局的に見渡し、環境問題をはじめとする課題について多様な視点で考えることを促しながら、ともに未来の可能性を探る展覧会を目指す。
また、本展では、輸送を最小限に留め、資源を再生利用するなど、環境に配慮したサステナブルな展覧会づくりにも取り組んでいる。
六本木ヒルズ森タワーの最上層53階に位置する、国際的な現代アートの美術館。世界の先鋭的なアートや建築、デザインなど、独自の視点で多彩な展覧会を企画すると同時に、収蔵品を紹介する「MAMコレクション」、映像作品を上映する「MAMスクリーン」、資料展示を中心とした「MAMリサーチ」、世界各地のアーティストと実験的なプロジェクトを行う「MAMプロジェクト」などの小企画展を展開。「アート+ライフ」—現代アートをより身近なものに—をモットーに、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズのパブリックアートの監修や、地域連携のアートイベントなども行う。
アーティゾン美術館
- C5
- 京橋
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃
ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン
西欧の近代絵画と日本の近代絵画を所蔵する石橋財団コレクションを前にして、改めて、山口晃(1969–)は以下のように述べている。
「日本は近代を接続し損なっている、いわんや近代絵画をや。 写実絵画やアカデミズム絵画に対する反動としての、あるいはその本来性を取り戻すためのものが西欧の〈近代絵画〉であろう。が、写実絵画やアカデミズム絵画の歴史を持たぬ本邦に移入された近代絵画とはなんであろう」
アーティストと学芸員が共同し、収蔵作品からインスパイアされた新作発表や、コレクションとアーティストの作品のセッションによって生み出される新たな視点を示す展覧会を構成する「ジャム・セッション」。2023年度は、山口を招いて「近代」「日本的コード」「日本の本来性」とは何かを問い、歴史や美術といった個人を圧する制度のただ中にあっても、それらに先立つ欲動を貫かんとする山口晃像を提示する。
公益財団法人石橋財団が運営し、23階建て高層ビル「ミュージアムタワー京橋」の低層部に位置する美術館。1952年開館のブリヂストン美術館を前身とし、同じ京橋に2020年1月に開館した。「ARTIZON(アーティゾン)」とは、「ART」と「HORIZON(地平)」を組み合わせた造語で、時代を切り拓くアートの地平を感じてほしいという意思が込められている。「創造の体感」をコンセプトに、評価の高い印象派や日本の近代洋画の作品に加え、新開館にともない戦後の抽象画や日本の近世美術も強化。「石橋財団コレクション」の幅と厚みを拡大し、古代から現代にわたる展覧会を開催している。
ギャラリー38
- F2
- 原宿
植松永次
月と団子と土あそび
1970年代から50年近くにわたる創作活動において、一貫して土や、自然との真摯な対話のなかに想像の源泉を見出してきた植松永次の個展。生命感あふれる泥漿の動き、土や日照の痕跡が際立つひび割れと歪み、それぞれの素材の特性を存分に活かした作品からは、既存の方法論や自身の意識にとらわれず、あくまでも土や自然から感じたことに主眼を置いた植松の姿勢を見ることができる。作品を通して、ごくあたりまえの風景に潜む、大切な時間や空間を見つけるきっかけを得ることができるだろう。
2016年9月、神宮前でオープンした現代美術ギャラリー。植松永次による個展以来、ステファニー・クエール、クリスチャン・プーレイ、ハートムット・ランダウアー、ロマーン・カディロン、オリバー・マースデンなど、多くの展覧会を開催。海外のアーティストを日本に紹介すると共に、日本の新進作家や歴史的に重要な作家を発掘し、海外に紹介することを目指している。