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セクション  11

男のいない抽象

日本の抽象表現の黎明期を考える際に名前の挙がってくるアーティストといえば、恩地孝四郎、斎藤義重、長谷川三郎あたりが定番である。彼らは、戦前と戦後を結ぶ存在で、特に斎藤は、戦後に美大の教員となり、そこで、やがてもの派を代表することになる関根伸夫や菅木志雄などを育てたということでも重視される。

以上の人物は、すべていわゆる男性である。しかし本当は桂ゆき(cat. nos. 86, 87)など女性の存在も十分に重要だ。斎藤と桂はアヴァンギャルド洋画研究所に同時期に通い互いに影響しあっていたはずだし、1938年の「九室会」の創立にはふたりとも名を連ねている。また桂は1948年の「夜の会」の創立にも参画している。にもかかわらず桂の名前がこれまで表だってこなかったのは、斎藤のように大学で影響力を行使する機会に恵まれなかったからかもしれない。

むろん、田中敦子(cat. no. 93)のように早くから評価を得ていたケースもある。彼女が属していた「具体」は、山崎つる子(cat. nos. 91, 92)など女性のメンバーが多いという意味でも斬新なグループであった。

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