AWT FOCUS

セクション  09

デザインと絵画

日本において絵画はなかなか不幸な存在だ。19世紀後半、西洋からやってきた油彩画(oil painting)の制作が本格化すると、それまで日本にあった絵画=oilをメディウムに使わない絵画は「日本画(Japanese-style painting)」と呼ばれ、一方の油彩画は、それに対立するものとして「西洋画(Western painting)」あるいは「洋画」と呼ばれるようになる。また油彩画も、印象派が紹介されると、重厚さを求めるやに派(旧派)と、明るさを求める外光派(新派)とに分かれ、抽象の思想がやってくると……。こうした状況では、絵画、さらにはアートという上位概念についての議論がしにくくなる。

だが、もちろん、不幸なことばかりではない。外部からやってきた人たちが、対立などそしらぬ顔で、斬新な絵画を制作、発表することがあるのだ。特に重要なのが、絵画に近接するグラフィックデザインと関連を持つ人たちである。彼らは、歴史に根ざす対立に囚われず、人間の生理を冷静に分析しながら画面を構築する。そういう意味でのデザイン的な絵画は、重さよりも軽さが基調となっているのが特徴で、しかも、油断して見ている者の心のうちに、わだかまりのような印象を残す。

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