小池一子 x 菊地敦己
必要なものは自分たちでつくる
—1970年代後半以降にみる現代アートとデザインのグラス・ルーツ
1983年より2000年までの17年間、江東区佐賀にあった食糧ビル(1927年竣工)の3階を改装し、膨大な数の展覧会とイベントを企画した「佐賀町エキジビット・スペース」。東京を拠点に小池一子が主宰したそのスペースは、商業的活動とは異なるオルタナティブ・スペースとして、作品発表の場の草分け的な存在として知られている。1976年、グラフィックデザイナーの田中一光、浅葉克己や小池らが共同発起した「東京デザイナーズ・スペース」もまた、「あらゆる領域の表現者たちの交流の場をつくろう」という当時の機運から生まれ、表現者の独立したクリエーションを尊重した稀有な活動だった。アーティスト、デザイナー、建築家など、様々な領域にわたる表現者を繋げ、あらゆる挑戦に伴走してきた小池が、「グラス・ルーツ」(草の根)をキーワードに、現地点から民間による自発的な活動のうねりと創造性の源流を辿る。聞き手は、AWTアートディレクターで、これまでに小池との協働経験を持つデザイナーの菊地敦己。
小池一子
クリエイティブ・ディレクター、佐賀町アーカイブ主宰。武蔵野美術大学名誉教授。1980年の「無印良品」創設に携わり、以来アドバイザリーボードを務める。1983年に佐賀町エキジビット・スペースを創設・主宰し、多くの現代美術家を国内外に紹介(〜2000年)。2022年には初の個展となる「オルタナティブ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動」を3331 Arts Chiyodaにて開催。著書に『美術/中間子 小池一子の現場』(平凡社、2020年)、訳書に『アイリーン・グレイ——建築家・デザイナー』(みすず書房、2017年)等。2020年度文化庁長官表彰。東京ビエンナーレ2020/2021総合ディレクター。
菊地敦己
アートディレクター/グラフィックデザイナー。1974年東京生まれ。武蔵野美術大学彫刻学科中退。1997-1998年スタジオ食堂プロデューサー、2000年ブルーマーク設立、2011年より個人事務所。アートディレクターとして、VI、サインデザイン、エディトリアルデザインなどを手掛けるほか、展覧会制作やアートブックの出版など活動は多岐にわたる。主な仕事に青森県立美術館、横浜トリエンナーレ2008のVI計画、ミナ ペルホネン、サリー・スコットのアートディレクション、『旬がまるごと』や『装苑』などのエディトリアルデザインほか。主な受賞に亀倉雄策賞、講談社出版文化賞、日本パッケージデザイン大賞、原弘賞など。