AWT TALKS シンポジウム
想像する他者・他者を想像する:現代アートが描く国境を超えた未来
アートウィーク東京の初日に開催されるシンポジウムでは、現代社会におけるアートの位置づけや批評的アプローチについて議論します。アートには何ができるのか?なぜ重要なのか?そして、アートは文化や文脈をどう超えていくのか? 多様なバックグラウンドをもつ第一線のゲストたちと共に考えます。今年のテーマは「想像する他者・他者を想像する:現代アートが描く国境を超えた未来」です。
東京画廊+BTAP
- B12
- 銀座
- B12
- 銀座
比田井南谷
前衛書家、比田井南谷(1912–1999)は古典書法から出発するも、書の可能性を模索するなかで文字性を放棄して「心線」の表現へと到達。読むことのできない書を数多く制作した。その作品は戦後日本の芸術全般に大きな衝撃を与え、海外での発表や書芸術の普及活動にも注力したことが知られている。近年も香港の大型美術館、M+に作品群が収蔵され、2021年の同館開館展「Individuals, Networks, Expressions」では大作《Work》(1964年)が話題となった。比田井によれば、書の芸術的本質は鍛錬された線に宿るとされ、伝統を逸脱したかのような実験的作品も、この信念に裏打ちされている。本展では1950~60年代の作品を中心に、彼の「線の芸術」の歴史的重要性を照らし出す。
1950年に銀座にオープンし、2020年に70周年を迎えた日本最初の現代美術画廊。ルチオ・フォンタナ、イヴ・クライン、ジャクソン・ポロック、フリーデンスライヒ・フンデルトワッサーなど、欧米の現代美術作家をいち早く日本に紹介。さらに高松次郎、白髪一雄、岡本太郎など、日本の現代アートを牽引する作家を取り上げてきたほか、1970年代から80年代にかけては金煥基、李禹煥などの韓国人作家を招いて韓国現代美術の展覧会や、当時知られていなかった中国現代美術に着目し、徐冰や蔡國強などの個展を開催した。02年には北京・大山子地区にB.T.A.P.(ビータップ)をオープン。東京と北京を拠点に日中韓を中心としたアジアの現代美術、幅広い世代・地域のアーティストを世界に発信している。
銀座メゾンエルメス フォーラム
- B11
- 銀座
- B11
- 銀座
内藤礼 生まれておいで 生きておいで
「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに活動する内藤の個展。作家は光や影、水や大気のうつろいがもたらす生と死のあわいにある、日々見過ごしがちなささやかな事物や情景、知覚しがたい密やかな現象に「根源的な生の光景」を見出し、私たちの中に結び付けることで深い体験をもたらす。本展は東京国立博物館での同名展(9月中旬まで開催)と共に、ひとつの大きな円環を描くように構想された。縄文時代の収蔵品と内藤の作品が共鳴する博物館展とつながるかたちで、銀座メゾンエルメスフォーラムでは連作絵画《color beginning/breath》や立体作品を、ガラスブロックを通じた現代都市の光に満ちる空間で体験。時空を超えたつながりや協和を浮かび上がらせる。
訪れる人々を迎える「メゾン(家)」というコンセプトで2001年に竣工。ランタンの灯りを思わせるガラスブロックを使った設計は 、建築家レンゾ・ピアノによるもの。8、9階にはエルメス財団の運営するアート・ギャラリー「フォーラム」を設置し、現代を生きるアーティストたちの創造や対話を、毎年3、4本の展覧会を通じて紹介している。自然光が注ぎ込む特徴的な展示空間はアーティストたちのインスピレーションの源となり、実験的な展覧会を生み出している。
森美術館
- D11
- 六本木
- D11
- 六本木
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
20世紀の最重要アーティストの一人、ルイーズ・ブルジョワ(1911–2010)の、国内最大規模の個展。ブルジョワは70年にわたるキャリアの中で、様々なメディアを用いて、男性と女性、受動と能動、具象と抽象、意識と無意識といった二項対立に潜む緊張関係を探求し、その比類なき造形力で作中に共存させてきた。彼女は自身が幼少期に経験した、複雑で、ときにトラウマ的な出来事の記憶や感情を普遍的なモチーフへと昇華させ、希望と恐怖、不安と安らぎ、罪悪感と償い、緊張と解放など、相反する感情や心理状態を表現する。また、こうした作品はフェミニズムの文脈でも高く評価されてきた。本展では約100作品(うち約半数は日本初公開)、3章構成でこの稀代のアーティストの全貌に迫る。逆境を生き抜いたひとりのアーティストによる生への強い意志を宿す作品群は、今日の人類が直面する苦しみを克服するヒントを与えてくれるだろう。
六本木ヒルズ森タワーの最上層53階に位置する、国際的な現代アートの美術館。世界の先鋭的なアートや建築、デザインなど、独自の視点で多彩な展覧会を企画すると同時に、収蔵品を紹介する「MAMコレクション」、映像作品を上映する「MAMスクリーン」、資料展示を中心とした「MAMリサーチ」、世界各地のアーティストと実験的なプロジェクトを行う「MAMプロジェクト」などの小企画展を展開。「アート+ライフ」—現代アートをより身近なものに—をモットーに、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズのパブリックアートの監修や、地域連携のアートイベントなども行う。
東京都現代美術館
- B6
- 清澄白河
- B6
- 清澄白河
日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション
日本の現代美術を中心とするコレクションとしては世界最大級の高橋龍太郎コレクション。本展は、その3500点あまりにのぼる巨大なコレクションから選りすぐった作品で総覧する、日本の現代美術史の入門編でもあり決定版ともいえる展覧会。高橋龍太郎コレクションの形成は、1995年に開館した東京都現代美術館の活動期と重なっている。東京という都市を拠点に形成されたこの2つのコレクションは、互いに補完関係にあるといえるだろう。一方それは、バブル崩壊後の日本の、いわゆる「失われた30年」とも重なっている。停滞する日本社会に抗うように生み出されたこれらの作品を、高橋は「若いアーティストたちの叫び、生きた証」と呼びます。会田誠、加藤泉、草間彌生、鈴木ヒラク、奈良美智、村上隆など、総勢115組の作品による、日本の戦後現代美術史の全貌をご覧ください。
また同時期には「開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ」も開催される。
約5,700点の収蔵作品を活かし、現代美術の流れを展望できるコレクション展示や大規模な国際展をはじめとする特色ある企画展示を行う美術館。絵画、彫刻、ファッション、建築、デザイン、アニメーションなど、幅広いジャンルの展覧会を開催している。美術図書室の蔵書は約27万冊をそろえ、美術に関する情報提供と教育普及を目的としたワークショップや各種講座、講演会なども行う。館内にはレストラン、カフェ&ラウンジ、ミュージアムショップも併設。
東京国立近代美術館
- A1
- B2
- 竹橋
- A1
- B2
- 竹橋
ハニワと土偶の近代
古(いにしえ)の地層から出土するハニワや土偶のイメージは日本中に浸透し、いまや押しも押されもせぬキャラクターと化しているといっていいだろう。出土遺物は、美術に限らず、工芸、建築、写真、映画、演劇、文学、伝統芸能、思想、さらにはテレビ番組にいたるまで、幅広い領域で文化現象を巻き起こしてきた。戦後、岡本太郎やイサム・ノグチによって、それまで考古学の資料として扱われていた出土遺物の美的な価値が「発見」されたというエピソードはもはや伝説化している。なぜ、出土遺物は一時期に集中して注目を浴びたのか、その評価はいかに広まったのか、作家たちが「遺物」の掘りおこしに熱中したのはなぜか――本展は美術を中心に、文化史の舞台に躍り出た「出土モチーフ」の系譜を、明治時代から現代にかけて追いかけつつ、ハニワや土器、土偶に向けられた視線の変遷を探る。
皇居のほど近くに建つ、日本で最初の国立美術館。近現代の多彩な企画展に加え、1万3,000点を超える国内最大級のコレクションでは、横山大観、菱田春草、岸田劉生らの重要文化財を含む19世紀末から現代までの幅広いジャンルにわたる日本美術の名作、海外作品に触れられる。日本が急速な近代化を成し遂げた激動の時代に日本の伝統的な美意識と西洋美術という異文化のあいだで模索した芸術家たちの歩みを通覧できる。会期ごとに選りすぐりの約200点を展示する所蔵作品展「MOMATコレクション」では、100年を超える日本美術の歴史を概観できる。また、対話による鑑賞プログラム「所蔵品ガイド」や、年に数回、様々なテーマに基づいて国内外の美術作品を紹介する企画展を実施。展望休憩室「眺めのよい部屋」からの眺望に加え、周辺には北の丸公園や千鳥ヶ淵など自然豊かな環境が広がっており、美術館と併せた散策も楽しめる。
資生堂ギャラリー
- B12
- 銀座
- B12
- 銀座
渡辺志桜里 宿/Syuku
資生堂ギャラリーでは、渡辺志桜里の個展を開催する。渡辺は、植物、魚、バクテリアなどの入った水槽やプランターを空間に点在させ、それらに水を循環させエコシステムを構築するインスタレーション作品で注目されてきた。彼女はこれらを通じて、「日本の」生態系が築かれてきたダイナミズムについて考える。生態系を長い時間軸でとらえ、自然と人間の関係にまつわるナラティブを提示することで、そこに孕む問題を浮かび上がらせると同時に、私たちが未来をどう生きるか、その手がかりを探っていく。新作を含む今回の個展は、会場全体を使ったインスタレーションや、映像インスタレーションなどで構成される予定。
1919年オープン。現存する日本最古の画廊とも言われ、関東大震災や戦争、建物の改築による中断期を除き、「新しい美の発見と創造」に継続的に取り組み、3,100回以上の展覧会を重ねて日本の芸術文化の振興に寄与。同ギャラリーを作品発表の場として、後に日本美術史に大きな足跡を残した作家も多い。90年代からは現代美術に主軸を定め、前衛性と純粋性を兼ね備えた同時代の表現を積極的に紹介している。5メートルを超える天井高を持つ空間は、様々な表現を可能にする場として、海外の作家からも愛されている。
東京都庭園美術館
- C11
- 目黒
- C11
- 目黒
建物公開2024 あかり、ともるとき
東京都庭園美術館では、1933年に竣工した旧朝香宮邸(東京都庭園美術館本館)の魅力を紹介する、年に1度の建物公開展を開催する。現在、国の重要文化財に指定されているこの建物は、フランスのアール・デコの精華を取り入れると同時に、宮内省内匠寮の技術力や日本古来の高度な職人技が随所に発揮されたものである。今回は邸内の多彩な照明に着目し、その見どころやデザインの源泉を辿る。あわせて、照明作品を中心に家具や調度を用いた情景再現を行い、新館の展示室ではアール・ヌーヴォー期からアール・デコ期にデザインされたランプ等、本館の意匠や装飾を想起させる照明器具を展示する。
1933年に朝香宮邸として建てられ、アール・デコ様式の建物の空間と緑豊かな庭園が調和した美術館として83年に開館。2014年には杉本博司を設計アドバイザーに迎えた新館が完成。またその翌年には、本館、正門、茶室などが国の重要文化財に指定された。隣接した庭園も宮邸時代の面影を残し、芝生で覆われた開放感のある庭と、築山と池を備え起伏に富んだ日本庭園は、桜や紅葉など四季折々の変化を楽しめる。装飾芸術の観点から美術作品を紹介する特色のある展覧会を開催すると共に、庭園の活用や様々な教育普及事業に取り組み、文化的な都市空間の形成と、あらゆる鑑賞者に開かれた美術館の実現を目指している。
東京オペラシティ アートギャラリー
- D5
- 初台
- D5
- 初台
松谷武判
近年改めて国際的な評価を高めている松谷武判(1937–)は、60年を越える活動を通して、物質が示す表情や肌理(きめ)、存在感に生命の波動、流動を交錯させる優れた制作を続けてきた。1960年代に当時の新素材であるボンドを使った有機的フォルムを生み出す作品で、具体美術協会の第二世代の作家として頭角を現す。1966年に渡仏すると、以降の拠点となるパリで版画制作や空間表現を深め、やがて幾何学的な色面による表現に移行した。その後、改めてボンドによるフォルムに鉛筆の黒鉛を重ねた作品で独自の境地をひらく。作品を構成する様々な物質が示す表情に、生身の身体と五感で対峙することで生み出される作品、その豊かな多様性は、見る者を魅了してやまない。本展は、初期から現在まで約150点の作品、資料、映像などによって長きにわたる活動の全貌を紹介すると共に、その広い射程を今日的視点から検証する。
都市のライフ・スタイルに合わせた都市型美術館として、1999年に複合文化施設東京オペラシティビル内に開館。国内外のアーティストたちの作品を、絵画、彫刻、写真、映像、デザイン、ファッション、建築など多岐にわたるテーマの企画展を通して紹介。コレクター・寺田小太郎の寄贈による寺田コレクションでは、日本を代表する抽象画家、難波田龍起・史男父子の作品をはじめとする戦後の美術作品を収蔵している。また、国内の若手作家を紹介するシリーズとして「project N」を企画展と同時開催している。
東京都写真美術館
- C7
- 恵比寿
- C7
- 恵比寿
アレック・ソス
東京都写真美術館では、アレック・ソス(1969–、アメリカ)の個展を開催する。国際的な写真家集団・マグナムの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部等を題材とした作品で、世界的に高い評価を受けるソス。キャリアの転換点となった、部屋とそこに暮らす人をテーマとするシリーズ〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉を起点に、初期の代表作から最新作までを出品する本展で、「写真で物語を紡ぎ出す」ような表現の魅力を探る。
なお同時期には「日本の新進作家 vol.21(仮)」も開催、加えて11月9日からは「巨匠が撮った高峰秀子」写真展も開催予定。
「写真・映像」を専門とする、1995年開館の美術館。3万7,312点(2023年3月時点)の収蔵作品からテーマに沿ってセレクトした収蔵展、国内外の優れた作品を独自の切り口で紹介する企画展など、豊かな専門性と厚みを活かした展覧会を3つの展示室で開催。1階ホールでは、「アート&ヒューマン」をテーマに、良質な映画・映像作品の上映も行う。
小山登美夫ギャラリー
- B9
- 京橋
- B9
- 京橋
杉戸洋「apples and lemon」
シンプルかつ繊細な描線と色彩のなかに、知覚への探究心や詩情をも感じさせる絵画で知られる杉戸洋。空間と対話するような彼の作品は、従来の絵画の枠にとどまらない独自の発展を続けている。今回の個展は、新作と1990年代中盤の作品を組み合わせた構成となる予定。杉戸は1970年愛知県生まれ。1992年、愛知県立芸術大学美術学部日本画科卒業。平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣賞受賞
1996年、江東区佐賀町に開廊。2016年より六本木に拠点を移し、2022年天王洲スペースをオープン、今年2024年11月には京橋に新スペースをオープン予定。開廊当初から海外アートフェアへ積極的に参加し、日本の同世代のアーティストを国内外に発信。日本における現代アートの基盤となる潮流を創出する。現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花、リチャード・タトル、ソピアップ・ピッチ、スナ・フジタなど国境やジャンルにとらわれず、巨匠から新たな才能まで幅広い作品を紹介し、独自の視点で現代アートマーケットのさらなる充実と拡大を目指している。
無人島プロダクション
- B4
- 錦糸町
- B4
- 錦糸町
祭壇
小泉明郎は近年、催眠術と仮想現実を扱い、人間の認知システムの機械的な性質を利用して、機械と人間が融合するビジョンを創造してきた。次のステージとなる本展は、従来の映像表現とも異なり、身体の本質である物質性を問う実験となる。ポスト・インダストリックな雰囲気に包まれたギャラリー空間で、仏教寺院の仏像のように彫刻群が安置される。これらは日用品や家具、機械部品を人体とつなぎ合わせて構成され、同時に19世紀の催眠術の記録写真を基にしたコラージュや絵画も展示される。人間の身体は、資本主義によって商品化され、戦争によって物や死体の画像に変えられ、人種差別によって無関心な対象物になり、AIによってデータやパターンに変換される。こうした大きな力に対抗する挑戦は、物体や画像、パターンだけに還元されてはならない、生の経験の本質を取り戻すことにある。物に帰されてしまった身体の中で、私たちは豊かな人間性の空間をいかにして取り戻せるだろうか。
2006年高円寺で開廊。清澄白河を経て、19年に現在の墨田区江東橋に移転。現代社会や歴史に対しての鋭い観察と考察を、表現を通して可視化する作家たちのマネジメントを行う。また、作品のコンセプトに応じてギャラリー外での展覧会企画も多数行う。作家のビジョンを紹介するため、書籍やDVDなどのプロダクトも多数制作している。取り扱い作家は八谷和彦、八木良太、Chim↑Pom from Smappa!Group、風間サチコ、臼井良平、朝海陽子、田口行弘、松田修、加藤翼、小泉明郎、荒木悠。
日動コンテンポラリーアート
- D10
- 六本木
- D10
- 六本木
リム・ソクチャンリナ「Letter to Water (Tanle Sap Lake)」
リム・ソクチャンリナ(1987年カンボジア・プレイベン生まれ、プノンペン在住)は、写真、映像、パフォーマンスなど多様な手法を用いて、現代のカンボジアにおける政治や経済、環境、文化的変化やその問題に焦点を当てた作品を発表している。巨大なグローバル資本と様々な政治的思惑によって急速に変化する社会や風景を日々記録し、これまでの地域のコミュニティや文化、自然が失われていく未来に警鐘を鳴らすのである。今回は個展にあわせて新作を発表する予定。
日動画廊の新部門として2002年に設立した現代美術専門のギャラリー。国内外の新進気鋭のアーティストを紹介している。1928年の創業以来、日本に初めて西洋絵画を紹介し、革新的な企画によって文化の普及に努めてきた日動画廊の創業・開拓理念を受け継いでいる。また、15年に台北支店をオープンして以降、アジアの現代美術も積極的に紹介している。
国立新美術館
- D10
- 六本木
- D10
- 六本木
「荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ」「田名網敬一 記憶の冒険」
「荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ」は、世界各地の国際展や美術館でパフォーマンス・アートを発表する米国在住のアーティストの個展。今回、荒川ナッシュは会場内に多様な画家20数名による絵画を「登場」させ、それらを存在感のあるポップスターと見なし、各絵画のアティテュード(姿勢)から発案された協働パフォーマンスを行う。絵画の作者はアンリ・マティスら20世紀の巨匠から、八重樫ゆいなど現在活躍中の作家におよぶ。さらに作家による「短くも親密な」展覧会ツアーも予定している。
「田名網敬一 記憶の冒険」は、近年再評価が進む田名網敬一の、初の大規模回顧展となる。大学在学中にデザイナーとして活動を始め、1975年には日本版月刊『PLAYBOY』の初代アートディレクターを務めるなど、雑誌や広告を主な舞台に日本のアンダーグラウンドなアートシーンを牽引。1960年代以降は絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションなどの制作を展開している。美術史の文脈において重要な爪痕を残してきた彼の60年を超える創作に、最新作を含む膨大な作品数で迫る。
2007年、独立行政法人国立美術館に属する5番目の施設として開館。以来、国内最大級の展示スペースを活かした多彩な展覧会の開催や、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、様々な教育普及プログラムの実施を通して、人々が多様な芸術表現を体験し、学び、互いの価値観を認め合うことのできるアートセンターとして活動している。「森の中の美術館」をコンセプトに黒川紀章らによって設計された建物は、波のようにうねるガラスカーテンウォールが美しい曲線を描き、円錐形の正面入口と共に個性的な外観をつくり出している。吹き抜けの1階ロビーからは四季折々の眺めを楽しむことができ、レストランやカフェ、ミュージアムショップなどの付属施設も充実。
ワタリウム美術館
- D3
- 外苑前
- D3
- 外苑前
SIDE CORE展|コンクリート・プラネット
SIDE COREは、公共空間や路上を舞台としたアートプロジェクトを展開するアートチーム。高速道路や線路、地下水路などを特殊な方法で撮影した作品や、公共空間で見られる街灯やガードレール、道路工事のサインなどを素材としたインスタレーション、ネズミの人形がただただ夜の東京を歩くドキュメント映像など、都市の独自な公共性や制度に着目し、これに介入/交渉することで作品づくりを行う。その表現方法は常に広がり、更新されており、現在進行形の活動がますます注目を集めるなか、本展は東京では初の大掛かりな個展となる。今回は視点・行動・ストーリーテリングをキーワードにした作品群を展示し、館内だけでなく周辺環境にも展開。会期中にメンバーが街歩きしながら街の歴史やストリートアートを解説するツアー「night walk」も開催予定。
1990年9月に開館。「態度が形になるとき」を企画したハラルド・ゼーマンをはじめ、ヤン・フート、ジャン=ユベール・マルタンといった国際的なキュレーターを日本に招き、数々の展覧会を行ってきた。現在は年間3、4本の企画展を開催し、現代美術、日本文化思想、建築など多岐にわたるテーマを扱っている。また、展覧会をより深く理解してもらうための様々なイベントを開催しているのも大きな特徴。設計はスイス人建築家のマリオ・ボッタが担当した。
ユミコチバアソシエイツ
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
木下佳通代、沢居曜子、辰野登恵子|70 年代 - 不毛なもの、その先に
戦後の20世紀後半以降、同時代のコンセプチュアルアートや抽象絵画の世界的潮流と呼応しつつも、それぞれ独自の表現を切り拓いた3作家の実践を再検証する展覧会。前衛美術集団「グループ〈位〉」の活動に携わった後、写真や絵画を用いてイメージと知覚、物質の関係を考察した木下佳通代。紙にナイフで無数の平行線を引き、その傷をコンテ(カーボンチョーク)で浮かび上がらせる作品で知られる沢居曜子。そして、幾何学的な抽象表現を通じて多層的な絵画空間を探求した辰野登恵子。今年2024年には「没後30年 木下佳通代」(大阪中之島美術館)が開催され、去る2023年の「女性と抽象」展(東京国立近代美術館)では3者とも紹介されるなど、再評価が進む彼女らの軌跡を見つめ直す。
1988年、マネジメントおよびプランニングオフィスとして設立。2010年、西新宿にギャラリースペースをオープン。22年、六本木の新スペースに移転。美術館やギャラリーといった美術機関での展覧会やプロジェクトを手掛けるほか、ファッション、インテリアなどにもアプローチし、ジャンルを超えたコラボレーションを実現している。高松次郎、眞板雅文、吉田克朗など歴史的に重要な物故作家のエステート運営、国際アートフェアへの出展を行うほか、作家についての歴史的な理解を促し、社会的な認知度を高めるため、評論家のテキストを掲載した研究冊子を数多く出版。また新スペースの移転と共に、芸術・美術分野以外の専門家や研究者も招き、幅広い問題を議論する場「アルスクーリア」を立ち上げた。
リーサヤ
- C9
- 目黒
- C9
- 目黒
田中秀介「有様のほぐしくらべ」
暮らしのなかで日々出くわす驚きをもとに、絵画を軸とした制作を行う田中秀介の個展。今回は、星空、祖母、アンテナに丸太など、多種多様なモチーフを描いた新作14点を出展予定。雑多ともいえる絵画群の展示を通じて、現実の豊かさを体現しようとする。田中は1986年、和歌山県生まれ。2009年に大阪芸術大学美術学科を卒業後、現在は大阪を拠点に活動する。
ディレクターの李沙耶が2019年10月に設立した現代美術を扱うギャラリー。独自の表現を探求する若手アーティストを積極的に紹介。また同世代の様々なジャンルのクリエイターと共闘し、現代における表現の可能性について探り続けている。取り扱い作家に、田中秀介、村松佑樹、金光男、二藤健人、高橋銑、宮田雪乃、安藤晶子、須賀悠介。
ユタカキクタケギャラリー
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
鳥
古来、鳥は神話や芸術の中にさまざまな形で現れてきた。本展は、西洋と日本の近現代文学、音楽のコンテクストにおける「鳥」に焦点を当てたある表象論をもとに、都市生活において隠れた存在/飛来する突然の訪問者としての他者性、生物学的な謎や歴史を備えたモチーフとしての特性に着目する。同論においては、モーリス・ブランショらの思想家が用いた鳥の形象、オリヴィエ・メシアンが独奏曲集「鳥のカタログ」の制作において得たセリー(音列)としての鳥の声、そしてアルフォンソ・リンギスが『何も共有していない者たちの共同体』の中で定義した「世界のざわめき」と並び、キリスト教的な神の不在の上に成り立つ近現代の日本の文学や音楽における鳥の表象が論じられている。その東洋、西洋の思考様式を横断した多角的な観点をヒントに、同時代性を備えた展示を試みる。参加作家は本山ゆかり、ミヤギフトシほかを予定。
2015年7月、六本木にて開廊。現代美術の表現形態が多様化し、美術が紡ぐ歴史の在り方も魅力を深めていく中、さらに新しい表現を切り開くアーティストの活動をサポートすることを目的として運営。絵画、写真、彫刻、映像など、同時代に制作される作品を紹介し、展覧会と併せてアーティストトークの開催や展覧会カタログ、アーティストブックの出版も行っている。
ミヅマアートギャラリー
- A2
- 飯田橋
- A2
- 飯田橋
青山悟展「永遠なんてあるのでしょうか」
⻘山悟の刺繍表現は、画用紙に縫い取られたドローイングのように軽やかなものから、絵画や模型のように精巧なものまで自由かつ多彩で、そこに刺繍ならではの表情や文脈が縫い込まれている。また多くの作品が、人間社会への鋭い(ときに暖かい)眼差しを宿しているのも特徴であろう。青山は古い工業用ミシンを用い、近代化以降、変容し続ける人間性や労働の価値を問い続けながら、刺繍というメディアの枠を拡張させる作品の数々を発表している。ロンドン・ゴールドスミスカレッジのテキスタイル学科を1998年に卒業、2001年にシカゴ美術館附属美術大学で美術学修士号を取得し、現在は東京を拠点に活動している。本展では、今春に目黑区美術館で開催された個展「⻘山悟 刺繍少年フォーエバー」の関連展示を予定している。
エグゼクティブディレクターの三潴末雄により、1994年に東京にて開廊。時代ごとのスタイルに捉われない独自の感性を持った日本およびアジアの作家を中心に、国際的なアートシーンに紹介している。アジアにおけるコンテンポラリーアートマーケットの発展と拡大化に伴い、2008年に北京、12年にシンガポールのギルマンバラックスにMizuma Galleryを開廊。14年にはインドネシアのジョグジャカルタに日本のアーティストと現地アーティストたちの交流の場としてレジデンススペース「ルマ・キジャン・ミヅマ」を開設。アートバーゼル香港やアーモリーショーなどの国際的なアートフェアにも積極的に参加し、国際的に活躍する作家を多数輩出している。
タケニナガワ
- C3
- 麻布十番
- C3
- 麻布十番
青木陵子
青木陵子はドローイングや手工芸品などを用いて、世界を日常と地続きのものとして知ろうとするような作品をつくり続けている。そこでは動植物や日常の断片のかたち、さらには幾何学模様などがイメージの連鎖として描かれ、布や紙、その他の素材で作られたオブジェと組み合わせられる。彼女の作品は、イメージがどのように私たちの知覚を形成し、反映し、変化させるのかを探求する、コンセプチュアルとも言えるアプローチによって発展を続けてきた。今展では、Take Ninagawaの空間をひとつの「箱」ととらえて、サイト・スペシフィックなインスタレーション作品を発表する予定である。青木は1973年兵庫県生まれ、京都在住。1999年に京都市立芸術大学大学院ビジュアルデザイン科を修了している。
2008年、東麻布に開廊。戦後日本の実験的な美術の前例にならい、現代の問題に国際的な視座をもって取り組む幅広い世代の作家をプロモーションする。13年より「Art Basel」や「Art Basel香港」に参加。近年では、アートのグローバルサウス問題に取り組むプラットフォーム「SOUTH SOUTH」や、コロナ禍において世界中のギャラリー有志で立ち上げた「Galleries Curate」、「IGA(インターナショナル・ギャラリー・アライアンス)」など数々のイニシアティブに参加し、国際的な課題にも取り組んでいる。
タリオンギャラリー
- A4
- 目白
- A4
- 目白
青空テンカウント
飯川雄大と大岩雄典による二人展。全体像のつかめない巨大な猫の彫刻など、コミュニケーションや伝達の不完全さや曖昧さ、感覚の共有不可能性をテーマに制作を行う飯川。演劇、文学、ゲームなどを参照しつつ、時空間とその経験をめぐる考察を、作品や文筆活動によって提示する大岩。 両者は作風こそ異なるが、それぞれ作品が置かれる「場所」の物理的・政治的・経済的性質に関心を向けることで、独自の形式のインスタレーションを制作・発表してきた。本展では、時空間における公共性と私性、特に政治的行為が実効力をもつための基礎でもある「場所の占有」をめぐって、その特異点としての決闘場・スポーツ興行・劇場に目を向け、両作家が新作を展開する。
2011年に谷中にて開廊し、14年に目白へ移転。美術の歴史的展開に対する批評性や、同時代の文化的動向との境界性、社会的変化との交接性を重視する一貫したディレクションに基づく展覧会を手掛ける。世代を超えて問題意識を共有するアーティストの長期的なマネジメントを行い、国内外のアートシーンへと発信している。タリオン(TALION)という言葉には、美術を取り巻く様々な人々、制度や行為、言葉や金銭が、閉塞した状況を乗り越えて、新たなつながりを紡いでいくための原理を見いだしたいという思いが込められている。 取り扱い作家は小泉圭理、友政麻理子、石川卓磨、宮下さゆり、二艘木洋行、山下拓也、飯田Jennifer桃子、髙柳恵里。
ブラム
- D8
- 原宿
- D8
- 原宿
ティム・ブラムとジェフ・ポーによって、サンタモニカで1994年設立。2014年、東京のスペースをオープン。29年間におよぶアーティストたちとの協働は、新しい言説を生み出す試みとなり、現代美術の新たな潮流を生んでいる。特に10年以降は「もの派」、韓国のモノクローム抽象画「単色画」、戦後ヨーロッパの「CoBrA」、ブラジルのモダニズムといった美術史における重要な動向を検証する美術館規模の展覧会を数多く開催してきた。出版事業、パブリックプログラムの開催、オンラインプラットホーム「Broadcasts」を通して、実空間にとどまらない活動にも積極的に取り組む。
フイギユア
- A5
- 大塚
- A5
- 大塚
Pigs and Fishes Surround You
陶を素材とする立体作品を手掛ける岡田理(おかだ・しずか)の個展。岡田によるセラミック作品は、焼成など特定のプロセスを経て制作される陶の性質上、それぞれが具体性を伴いながらも、そぞろ歩くようにナラティブがつくり上げられ、抽象・具象の単純な二項対立では捉えきれないイメージの数々を提示する。フイギユアでは2018年の「細くて長い私の笛/Slender and long my whistle」以来2度目の個展となる本展は、セラミックの新作群で構成され、作家の新たな一面を提示するものとなる。岡田は1987年群馬県生まれ。2010年に武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科の陶磁器専攻を卒業後、ドイツ、フランクフルトの国立造形美術大学シュテーデルシューレに在籍。日本とドイツを中心に作品を発表してきた。
2017年に北大塚にオープンしたアーティストランスペースおよびプロジェクト。国内外の幅広いアーティストの展覧会などを北大塚のスペースで企画開催するほか、アーティストブックなどの製作と出版も行う。これまでの主な展覧会に、デヴィッド・オストロフスキー「空っぽの水(反ドローイング)」(2023年)、XYZcollectiveとの共同企画による丹羽海子 「靴の中の暮らし(幻影コオロギ)」(2023年)、「Drawing Fever I: Narrative, on-going 」(2022年)、岡田理、Galerie Max Mayerとの共同企画によるニコラス・グァニーニ「Interference」(2022、2021年)、Fitzpatrick Gallery、The Performance Agencyとの共催によるハナ・ワインバーガー「wedidntwanttoleave.live」(2020年)、COBRA「THE MUSEUM」(2019年)、岡田理「Slender and Long My Whistle」(2018年)など。
ハギワラプロジェクツ
- B7
- 清澄白河
- B7
- 清澄白河
夢見るキメラ
Hagiwara Projectsでは、京都のアーティストランスペース、sodaの創設者・ディレクターである田中和人と、パリを拠点とするアーティストデュオのITTAH YODA(イッタ・ヨダ)による共同キュレーション展「夢見るキメラ」を開催する。写真による抽象表現を探求する田中と、未来と過去をつなげて多感覚的な作品空間を生み出すITTAH YODAに加え、社会・環境の変容を扱う詩的な絵画・彫刻等を手がけるトビリシ(ジョージア)拠点のニカ・クタテラーゼ、さらに時間、記憶、語りなどをめぐる文学的な映像表現で知られる東京拠点の地主麻衣子など、国内外のアーティスト8名による、新作を含むグループ展となる。
2013年に西新宿に開廊、21年3月江東区に移転。国内外の若手作家を中心に絵画、彫刻、写真など多ジャンルの展覧会を企画。また、外部のキュレーションも積極的に取り入れ、日本のアートシーンの構築に取り組んでいる。主な取り扱い作家に、土肥美穂、早川祐太、今井俊介、地主麻衣子、城戸保、額田宣彦、ザック・プレコップ、ジョアンナ・ピオトロフスカなど。
プラダ 青山店
- D2
- 南青山
- D2
- 南青山
「LIZZIE FITCH / RYAN TRECARTIN: IT WAIVES BACK」展
アメリカのコラボアーティスト、リジー・フィッチとライアン・トレカーティンの日本初個展。彼らはノンリニア映像と没入型インスタレーションを融合し、サウンドも駆使した「彫刻的劇場」と称されるハイブリッドな環境へと作品化する。今回は大型インスタレーションと映画2作品、および彫刻群で構成された《It Waives Back》(2019-2024)のアジア初展示。これは2人がオハイオ州を拠点に2016年から続けるプロジェクトに属するもので、ベースとなったのはプラダ財団の委託でミラノの複数の建物にまたがり制作された大規模マルチメディアインスタレーション《Whether Line》(2019)である。同作では、彼らがオハイオに建設した巨大な流れるプールや堀、ホビーバーン(個人が趣味などのために設けた大型の建物)、高さ50フィートの森の見張り塔などからなるセットを舞台に、領土や所有権などの対立概念や、それらが自己の発達に与える影響をテーマにした表現が展開された。自分たちのプロジェクトを「時間の経過とともに成長し変化するダイナミックな環境」だという彼らの言葉通り、今回はこうしたアイデアを、ゲームの世界なども取り入れてさらに探求した成果を発表する。
プラダ青山店は、建築ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン設計によるエピセンター(「震源地」の意)。ブランドの創造性が凝縮された場を、訪れた人々に提供する。水晶を思わせるこのランドマークビルは、大都市東京の景観を根底から変える存在感を持ち、数百枚のガラスがはめ込まれた菱形格子状のファサードを通して、この建物の構造ならではの独特の世界観を垣間見ることができる。6階のスペースでは、プラダ財団の企画による国内外のアーティストの展覧会を年2回開催している(不定期)。
ペース
- C14
- 虎ノ門
- C14
- 虎ノ門
アーリーン‧シェケット
アーリーン‧シェケットは1951年、ニューヨークに⽣まれ、現在はニューヨーク州北部の郊外で制作している。陶芸のジャンルに収まらないハイブリッドな彫刻で広く知られるこの作家は、⾦属、粘⼟、⽊の混在による建築的かつ有機的かつメカニカルな、特徴あるフォルムを⽣み出してきた。⼀⾒異質に⾒える形状や⾊彩、素材が統合された彼⼥の作品は、抽象的でありながら、⼼理的および感情的な要素を併せ持ち、鑑賞者の熟考を誘っているかのようだ。⽇本での初個展には、ここ数年の作品と新作が並び、静寂さと動きの両端を揺れ動く作⾵のなかに、この作家が⻑く惹かれてきた⽇本美術の静謐さと現代⽇本の物質⽂化という⼆重性が⾒て取れる。傾いたり、捩れたり、曲がったり、溶け出すようにも⾒えるその彫刻は、素材と形態による表現の可能性を掘り下げつつ、私たちがその本来的な⽭盾を感じながらそこに座ったり、周囲を歩き回ったりすることを促している。
1960年にアーニー・グリムシャーによって設⽴された国際的なギャラリー。現在はその息⼦であるマーク・グリムシャーが率い、20世紀を代表する偉⼤なアーティストから、今⽇最も影響⼒のあるアーティストまで、幅広い作品を扱う。ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、ジュネーブ、⾹港、ソウルと世界各都市に拠点を展開し、東京では2024年に⿇布台ヒルズで3フロアを用いたギャラリーが誕生する。内装は藤本壮介が⼿がけている。
ファーガス・マカフリー
- D2
- 表参道
- D2
- 表参道
白髪一雄・金山明2人展|Plus/Minus
金山くんはわりと僕の言うことに耳を貸してくれて、「君は君でな、なんか冷たい抽象が好きらしいから、極端にそれやっていったらどうや」と。「僕は熱い抽象が好きやから、熱い抽象の方へ極端に行こう」って二人で約束して、「お前はこっち、わしはこっちや」というような感じでね。それで「プラス・マイナス」っていう理論を僕が勝手に作ってね。
——白髪一雄
金山明(1924-2006)の革新的なロボット絵画と白髪一雄(1924-2008)の足を使った絵画を展示し、両具体作家の生誕100周年を祝う特別展を開催する。同展では、「誰もやらないことをやれ!」という具体美術のマントラを体現した、金山と白髪の非常に独創的かつ革新的な絵画手法に焦点を当てる。
ファーガス・マカフリーは2006年の設立以来、アメリカ、日本、ヨーロッパの戦後および現代美術を世界に向け紹介。10年以上にわたり24名以上の作家、エステイトとともに幅広いプログラムを展開してきた。日本戦後美術、気鋭のヨーロッパ美術の国際的な評価を確立する上で中心的な役割を担う。ニューヨーク、東京、サン・バルテルミー島にギャラリースペースを持つ。東京のギャラリーは18年3月のロバート・ライマン展でオープンし、20年以降はジャスパー・ジョーンズ、リチャード・セラ、久保田成子、白髪一雄、田中泯、キャロリー・シュニーマン、マシュー・バーニーらによる展覧会を開催している。
ミサコ&ローゼン
- A5
- 大塚
- A5
- 大塚
モーリーン・ギャレス
ミサコ&ローゼンでは、モーリーン・ギャレスの個展を開催する。静かな風景に佇む控えめな建物などを柔らかな色調で描くギャレスの絵画は、かつてそこを通り過ぎたことがあるような感覚を呼び起こし、あるいは絵画史の変遷と交錯の営みをも思い起こさせる。1990年代以降、継続して高い評価を得てきた彼女の作品は、2016年、ミサコ&ローゼンの10周年記念展として、開廊前に影響を受けたアートシーンをテーマにした「December (playback 2)」でも紹介された。今回の個展では、小さめサイズのハイクオリティな新作絵画5点ほどで会場を構成する予定。
ローゼン・ジェフリーと美沙子により2006年、豊島区北大塚にオープンした現代美術ギャラリー。逐語的な表現に根ざしつつユーモアのある国内外のアーティストを紹介している。所属アーティストはリチャード・オードリッチ、有馬かおる、加賀美健、ダーン・ファンゴールデン、トレバー・シミズ、ジョシュ・ブランド、ファーガス・フィーリー、マヤ・ヒュイット、廣直高、ネイサン・ヒルデン、題府基之、高橋尚愛、南川史門、持塚三樹、茂木綾子、森本美絵、奥村雄樹など多数の作家を紹介している。
ナンヅカアンダーグラウンド
- D7
- 原宿
- D7
- 原宿
ロビィ・ドゥウィ・アントノ
ロビィ・ドゥウィ・アントノは1990年インドネシア生まれ、ジョグジャカルタ拠点の作家。幼少期より「描く」ことに強い関心を示した彼の非凡な才能は、家の壁に自由に落書きを許した両親の支えによって花開いた。特別な美術教育を受けずとも、見よう見まねで誰よりも上手に、美しく描く技術を手に入れたアントノは、2012年に友人が開いた展覧会の成功によってアーティストとしての才能を開花させた。これまでの作品の中には、マーク・ライデンや奈良美智といった、自身が敬愛するアーティストのスタイルからの影響を色濃く反映したものもあった。一方、これらの作品は、単色をベースにスプレーペイントを用いた独特の世界観を描き出す。子どものように見えるその肖像はアーティストのルーツを想起させ、少年とも少女とも思えるその肖像は曖昧さの持つ美学を連想させる。
2005年、渋谷に設立。デザイン、イラスト、ストリートカルチャー、ファッション、ミュージックなど、アートの周辺分野における創造性をアカデミックに扱う実験的な企画ギャラリーとして活動。同時に田名網敬一、空山基、山口はるみ、佐伯俊男といった戦後日本のアートシーンの外で評価されてきた才能を再発掘し、国際的な現代アートの舞台での紹介に努める。多くの国際的なギャラリーとも協力し、佃弘樹、三嶋章義、大平龍一、谷口真人、モリマサト、ハロシといった国内の若手および中堅作家の育成と紹介を行いながら、選り抜きの世界的アーティストと協力してグローバルなアートシーンの現在を体現している。
タロウナス
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
ジョナサン・モンク、サルヴァトーレ・マンジオーネ「Salvo Stage Sets(仮題)」
イギリス人作家のジョナサン・モンクと、イタリア人画家のサルヴァトーレ・マンジオーネによる展覧会。1960年代初期から活動したマンジオーネは「サルヴォ」として知られ、日々の生計を立てるために安価な肖像画や風景画、有名作品の贋作を販売していたという。一方のモンクは、そのサルヴォを題材にしたシリーズ「Salvo Trees」を2016年より発表してきた。モンクはサルヴォの風景画の画像をA4サイズの印刷紙や雑誌の広告などの上にプリントアウトし、原画に属する木だけを残して背景を絵具で塗りつぶす。従来から「引用」(appropriation)を制作手法のひとつとする彼は、ここでは反復の概念に焦点を当て、サルヴォの芸術に新たな視点を提供しつつ、自身のアプローチをも反映させていると言える。本展では「Salvo Trees」の最新作と、マンジオーネの作品を展示予定。
1998年に江東区佐賀町に開廊し、馬喰町を経て、19年に六本木へ移転。コンセプチュアルアートの新しい潮流に注目し、国内外の作家約30名を取り扱うほか、美術館などの公共機関との協働も多数行う。所属作家は、秋吉風人、榎本耕一、サイモン・フジワラ、ライアン・ガンダー、リアム・ギリック、春木麻衣子、ホンマタカシ、ピエール・ユイグ、池田亮司、松江泰治、田島美加、津田道子、ローレンス・ウィナーなど。
ペロタン東京
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
ダニエル・オーチャード
ダニエル・オーチャードは1985年、米国ミシガン生まれ。ピカソやマティスなど近代の巨匠たちの様式や題材に倣いながら、初期キュビズムの多視点的なスタイルや、ソリッドな輪郭と飽和色を用いて、より抽象的な女性のヌードを描く。画家は平面ごとの描画や、厚塗りで形づくる抽象的なパーツの一つひとつに向き合い、女性の身体表現を探求。裸婦の概念は「ミューズ」として美術史に刻まれ、研究対象としても確立されているが、オーチャードは自身が女性アーティストとして鍛錬し、ポーズをとり、写生画の授業で教鞭をとった経験も吹き込み、作品にさらなる深みを与えている。美術史上の「お決まり」から現代の余暇まで、どこかで見たような情景やモチーフを用いることで、鑑賞者が題材を推測する過程を排し、その表現方法へと意識を導いていく。感情を抑えて描かれた女性たちのボディランゲージは背景と呼応しつつ、女性たちの内面への共感と熟考を促す。
1990年、フランス人ギャラリストのエマニュエル・ペロタンがパリで開廊。2012年の香港を皮切りに、ニューヨーク(2013年)、ソウル(2016年)、東京(2017年)、上海(2018年)、ドバイ(2022年)、そしてソウルに2つ目のギャラリーをオープンし、23年にはロサンゼルスのギャラリースペースをオープンした。
ポエティック・スケープ
- C8
- 中目黒
- C8
- 中目黒
柴田敏雄
POETIC SCAPEでは2度目の柴田敏雄展。ほぼ新作のカラー作品約20点を発表する。ベルギー留学から帰国後、夜景の写真からスタートした柴田は、模索のなかで日中にダム、擁壁、橋などの構造物を撮影するようになる。これらを発表した1986年の個展名「Geo-Metry-Graphy」(ツァイト・フォトサロン、東京)は、Geography(地理)とGeometry(幾何学)にPhotography(写真)を掛け合わせた造語である。今回、出展作に幾何学的な構図を持つものが多いことから柴田は同展を思い出し、次のように語る。
「画面上に骨格、基礎となる構造を持たせることを常に念頭に置き、中立的な視点で形や対象を見る事を心がけて風景(Landscape)の撮影を始めました。それは、ある景色の紹介や説明、またVista Point*からの写真ではなく、目の前の任意の風景からあるSceneを自分のやり方で切り出す作業でした。モノクロ写真からカラー写真へと手法が変わった後も、この基本的な考え方はずっと続いています。」
*Vista Point:前もって用意された良い景色をみるための場所
2011年、中目黒に写真専門ギャラリーとして開廊。写真をキュレーションの軸に据えながら、近年は写真以外の作品も取り扱う。ギャラリー名の「POETIC SCAPE」とは「詩的な(poetic)」と「風景(landscape)」を掛けけ合わせた言葉で、言語では明確に定義できない、しかしアーティストには確かに見えている新たな風景を人々に届けるという意味を込めている。主な取り扱い作家は、野村浩、渡部敏哉、森山大道、野村佐紀子、柿崎真子、山田悠、トレイシー・テンプルトンなど。ギャラリー奥にはストアを併設し、ギャラリーゆかりの作家の作品集や写真論に関する書籍などを販売。また、写真・平面作品の額装も行なう。
ミサシンギャラリー
- C13
- 広尾
- C13
- 広尾
崔在銀
生命の循環や時間をテーマに制作を続けるアーティスト、崔在銀(チェ・ジェウン)の個展。2023年に銀座メゾンエルメスで発表した《White Death》から派生した写真作品の発表を予定している。《White Death》は沖縄の白化した死珊瑚を用いて、緊迫した環境問題に静かに迫るインスタレーション作品。本展では、こうした白い珊瑚を撮影した新作の写真作品を出品する。崔は1953年、ソウル生まれ。1972年の来日を機に生け花に魅せられ、草月流の三代目家元・勅使河原宏(てしがはら・ひろし)に師事してその空間概念や宇宙観を学び、80年代から自身の作品を発表。1995年には第46回ヴェネチア・ビエンナーレに日本代表の1人として参加するなど、国際的に活動を続けている。
2010年11月に港区白金の元鉄工所の建物にオープン。18年8月、大使館が多く立ち並ぶ閑静な住宅地、南麻布へ移転。アートの垣根を越え、建築や演劇など異なるジャンルと関連性や可能性を追求し、第一線で活躍するアーティストの歴史的な位置付けを行っていくことを目指す。また、1960年代から70年代の日本のコンセプチュアリズムに焦点を当て、戦後の日本美術に対する新たな洞察、分析から展示を行い、作品の再評価へつなげている。
スノーコンテンポラリー
- D12
- 六本木
- D12
- 六本木
デヴィッド・ステンベック
詩人、文芸評論家、編集者として活動してきたステンベックは、やがて自身が思い描く詩の世界を3Dソフトで視覚化するデジタルアートの制作を始めた。2010年代後半、Instagramの世界的普及や、3Dソフトの技術と表現力の向上などを背景に、CGI(Computer Generated Imagery)によるアートをウェブ上で発表するアーティストが登場してきた。ステンベックはその黎明期からの代表的存在である。2019年からアイコン的な作品である雲とピンクのレーザーをモチーフとした《Jesolo Cloud》や、「I MISS YOU ALL」「WISH YOU WERE HERE」といったメランコリックな詩の一文を用いた作品を制作している。現実と非現実、意識と無意識の境界が曖昧になるような彼の作品は、特に若年層から強い支持を得ている。2023年の日本初個展に続き、今回は新作を含む10点以上の作品を展示予定。
キュレーターの窪田研二と石水美冬により、アーティストのマネジメントオフィスとして2010年に東京とシンガポールでスタートし、16年に西麻布に移転。絵画や彫刻を中心に扱い、国内外のアーティストによる創造的でカッティングエッジな展覧会を数多く開催している。ギャラリーでの展覧会以外にも、多彩な場においてプロジェクトやキュレーションを行なっており、新たな時代を切り開くアーティストを多数紹介している。主な取り扱い作家は河口龍夫、山川冬樹、雨宮庸介、HITOTZUKI、布施琳太郎、SWOON、デヴィッド・ステンベックなど。
タグチファインアート
- B3
- 日本橋三越前
- B3
- 日本橋三越前
2001年設立、10年に日本橋本町に移転。「芸術は人間の実存の問題に関わる」という信念のもと、国際的に活動するアーティストを展覧会やアートフェアを通してプロモートしている。主な取り扱い作家は、塚本暁宣、フランク・ゲアリッツ、岩名泰岳、キム・テクサン、クリスティアーネ・レーア、中川佳宣、西川茂、レギーネ・シューマン、ミヒャエル・テンゲスなど。
タカ・イシイギャラリー
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
ジャスティン・カギアット& ラファエル・デラクルズ「The Toys of Peace」
ジャスティン・カギアット(1989年東京生まれ)と、ラファエル・デラクルズ(1989 年サンフランシスコ生まれ)による二人展。今回は両者の協働による新作から構成され、ひし形のペインティング作品に加えてフィルム映像作品《The Toys of Peace》をインスタレーション形式で発表する。 サキの短編『平和の玩具』を連想させるタイトルを冠した同作の予告編では、その白昼夢的な映像世界の魅力の一端にふれることができる。
1994年の開廊以降、海外の現代作家を日本に紹介すること、そして日本を代表する写真家や新進気鋭の日本人作家の作品を海外へ発信する国際的な拠点となることの2つを目標として掲げ、展覧会企画を発展させてきた。ギャラリーの基盤は写真にありながらもその企画は現代に根ざし、取り扱い作家は様々な表現方法を用いている。年8回の個展あるいはグループ展に加え、作品の記録や発信を主な目的として、展覧会図録や書籍の出版も行っている。六本木のcomplex665に位置する主要スペースのほか、タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムでは日本の戦前戦後の写真および映像作品を専門的に紹介。2023年には京都と前橋に新スペースを開廊し、国内外の作家との恊働プロジェクトを企画している。今年11月には京橋にも新たな展示スペースをオープンする。
タクロウソメヤコンテンポラリーアート
- C10
- 天王洲
- C10
- 天王洲
大山エンリコイサム「Abstractions / Extractions」
ストリートアートの一領域であるエアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモチーフ「クイックターン・ストラクチャー」(QTS)を起点に表現を展開する、大山エンリコイサムの個展。QTSは、エアロゾル・ライティングにおいてスタイル化された文字が構成する「名前」(かき手のアルターエゴを表すもの)から、流れる線のみを抽出・反復することで生まれた。その過程でダイナミズムを最大化することで、抽象的なモチーフに再構成される。切り返し、旋回し、連結する線からなる切子状の表面は3次元の深度を生み、異なるスケールや素材によって変化する。同時に、個々の作品は一回性の痕跡として成立している。タクロウソメヤコンテンポラリーアートでは約2年ぶりの個展となる本展は、QTSを配した大型ペインティングなどを展示予定。大山は1983年東京生まれ。現在はニューヨークと東京を拠点とする。
2006年の設立以来、さまざまなジャンルで活躍するアーティストの紹介・サポートを行う。2018年からは天王洲のTERRADA Art Complexに移転。 近年は現代美術のみならず、20世紀の美術と現在を生きる人々とのつながりを探求・構築するプログラムを展開している。主な取り扱い作家は、岡﨑乾二郎、大山エンリコイサム、ラファエル・ローゼンダール、細倉真弓、黒川良一、村山悟郎、伊勢周平、山下麻衣+小林直人、岩井優、鈴木基真、矢津吉隆、坂本紬野⼦。
シュウゴアーツ
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
藤本由紀夫
「音」を「かたち」にとらえたサウンド・オブジェを中心に、人間の知覚を喚起する作品を生み出し続ける藤本由紀夫の個展を開催予定。作品を通して発見されうる外界の新たな認識手段を、鑑賞者それぞれの感覚へ委ねるような彼の表現は、作品そのものから鑑賞者を巻き込んだ空間へと波及していく。藤本は1950年、名古屋市生まれ、大阪市在住。大阪芸術大学音楽学科卒業後、音やかたちをめぐる独自のインスタレーションやパフォーマンスを展開・発展させ、関⻄を中心に国際的な活動を続けている。
*変更となる場合がありますので、詳細はギャラリーウェブサイトをご確認ください。
佐谷周吾が、父・和彦の佐谷画廊での勤務を経て、2000年にシュウゴアーツをオープン。16年に六本木のスペースに移転。22年からは、天王洲にビューイングスペース兼事務所倉庫としてShugoArts Studioを稼働している。企画・展示・作品保全と売買・コンテンツ制作などにおいて、プロ意識に支えられた高い専門性を発揮することで、「美術」に寄与する存在であることを目指している。千葉正也、藤本由紀夫、イケムラレイコ、小林正人、近藤亜樹、リー・キット、丸山直文、アンジュ・ミケーレ、三嶋りつ惠、森村泰昌、小野祐次、髙畠依子、戸谷成雄、山本篤、米田知子といったアーティストたちと共に展覧会を企画開催している。アーティストの自由な表現を最大限に尊重し、美術史に新たな価値創造を加えることを目的として活動を続けている。
ギャラリー小柳
- B10
- 銀座
- B10
- 銀座
束芋「そのあと」
手描きの線画やデジタル技術を駆使し、人間の心理や社会の不穏な気配を描く映像作品・インスタレーションで知られる束芋。異形のキャラクターや不気味な風景が織りなす映像世界は、2011年の第54回ヴェネチアビエンナーレ日本館展示、同年の第61回芸術選奨新人賞美術部門受賞など、国内外で高く評価されてきた。活動の場は舞台芸術にも広がり、近年もダンサー・振付家の森下真樹と発展させてきた映像芝居『錆からでた実』の米国4都市公演(2020年、ダンサーは間宮千晴)、サーカスパフォーマーのヨルグ・ミュラーと協働した舞台作品『もつれる水滴』の日仏8都市公演(2022年)を行った。こうした活動も経て今年は国内各地の美術展参加が続くなか、ギャラリー小柳では6 年ぶりとなる個展が実現する。新作の映像インスタレーション群を発表予定。
1852年(嘉永5年)創業の京橋勧工場を前身に、そのなかの陶器部門を「小柳商店」として明治〜昭和に渡って継続させ、87年に小柳商店美術部として現代陶芸ギャラリーを開廊。95年、現在の現代美術画廊を銀座で開業する。2016年には杉本博司のデザインで、ギャラリースペースをリニューアルオープンした。杉本博司、ソフィ・カル、マルレーネ・デュマス、クリスチャン・マークレー、ミヒャエル・ボレマンス、マーク・マンダース、トーマス・ルフ、須田悦弘、束芋など国内外の作家を扱うほか、コミッションワークのプロジェクトも手掛ける。
シャネル・ネクサス・ホール
- B10
- 銀座
- B10
- 銀座
小林椋、丹羽海子、ビアンカ・ボンディ
「Everyday Enchantment 日常の再魔術化」
シャネル・ネクサス・ホールは20周年となる本年、UCCA現代アートセンター(北京)のディレクターであるフィリップ・ティナリをアドバイザリーに迎え、異文化交流、および対話と芸術的コラボレーションのためのプラットフォームを目指してきた。この1年の締めくくりとして、長谷川祐子(金沢21世紀美術館館長、東京藝術大学名誉教授)が次世代キュレーターを育成する「長谷川Lab」のフェローが注目するアーティストの展覧会シリーズを開催する。
3名のアーティストは、植物や道具など見慣れたものを魔術のように変容させ、そこに独自の生命と物語を与える。ボンディが作り出す神秘的なタペストリーは、苔やクリスタルなどミクロな生命の生成に形をあたえ、小林は身近なオブジェクトを活気に満ちた踊る存在として組み直し、丹羽の妖精のような可憐なオブジェは彼女の個人的なストーリー、テキストと絡まって、エコフェミニズムを語る。
キュレーションは佳山哲巳とライヤン・フィン、長谷川はアーティスティックディレクションを担当する。
2004年12月、シャネル銀座ビルディングのオープンとともに活動をスタート。芸術を愛し、支援したガブリエル・シャネルの精神を受け継ぎ、コンサートとエキシビションを2つの柱にユニークな企画を開催する。エキシビションは写真、絵画や彫刻、インスタレーション、映像など、さまざまなアート展を実施。施設名に冠した「結びつき(nexus)」の言葉通り、アーティストにチャレンジと発表の機会を提供しつつ、今まで誰の目にも触れられていない作品を紹介するなど、この場所ならではの出合いがもたらす企画を行う。メゾンの創造性という価値への取り組みの一環として、異文化交流を含む、対話と芸術的コラボレーションのための重要なプラットフォームとして機能していくことを目指している。
カイカイキキギャラリー
- C4
- 広尾
- C4
- 広尾
AYA TAKANO
銀河の神話よりも長く alternative future
AYA TAKANOによるカイカイキキでは10年ぶりの個展。TAKANOは画家であり、漫画家、SF愛好家、自然保護活動家。幼少期から科学やSF、超自然的な世界に魅了され、90年代からはマンガやSF的世界観を背景にした独特のエロティシズムが漂う作品を発表してきた。3.11以降は地方や自然に対する理解を深め、それまで都市や夜景、月明かりが描かれた画面に、豊かな自然や昼の光が頻繁に登場するようになる。環境への配慮から画材もアクリル絵具から油絵具に変更。人類の根源的な世界を、より神話的な美しさとスケールで描いている。本展タイトルは歌人・小説家の雪舟えまの作中のフレーズに、展覧会のテーマ「alternative future」を組み合わせたものである。「有機的で、まるで古代に帰るような新しい未来のイメージをつくりたい」と語る彼女の新作油絵が円環状に展示され、自身がプランニングから手がけたジオラマ模型も登場。過去・現在・未来、そしてさまざまな文化が共鳴して紡ぐ神話的な世界観を体感できる。
なお11月15日からは、中野ブロードウェイ3階に位置するギャラリー「Hidari Zingaro」にて、AYA TAKANO初のキュレーション展を開催。全13作家が「alternative future」をテーマに制作した作品を展示する。
アーティストの村上隆により設立され、村上がマネジメントするアーティストを日本で紹介する場として2008年にオープン。アーティストのマネジメントと作品販売によりアートの社会的価値の創造を行うほか、海外の著名なアーティストに東京での展示の機会を提供し、日本のアートシーン全体の発展に貢献している。主な所属アーティストに、Mr.、タカノ綾、青島千穂、ob、くらやえみ、MADSAKI、TENGAone、大谷工作室、村田森など。海外からはKasing Lung、FUTURAらを招く。
コウサクカネチカ
- C10
- 天王洲
- C10
- 天王洲
ダン・マッカーシー
遊び心があふれる独創的な絵画やセラミック作品を、40年余にわたるキャリアを通じて世界各地で発表してきたダン・マッカーシー。コウサクカネチカでは2022年に桑田卓郎との2人展「Dear Friend」で紹介しはじめたが、今年はマッカーシーの日本での初個展を開催する。鳥をモチーフとして取り入れた新シリーズのセラミック作品や新作の絵画作品を発表し、旧作のセラミック作品も展示予定。
2017年3月に天王洲のTERRADA Art Complexにオープン。日本国内の現代アートを再定義する新世代に属するギャラリーとして、既存の枠にとらわれない新しい表現を行い、海外のアートシーンでも高く評価される国内作家や注目すべき海外作家の展覧会を企画している。取り扱い作家は、青木豊、沖潤子、桑田卓郎、佐藤允、鈴木親、舘鼻則孝、fumiko imano。
カナカワニシギャラリー
- B5
- 清澄白河
- B5
- 清澄白河
藤崎了一個展
藤崎了一は1975年、大阪府出身。京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。彫刻・写真・映像など多岐にわたるその表現は、身体性を媒介にして素材と向き合いながら現象を抽出し、対象となる状況の中に、偶然性や素材の物性を生かして制作される。作家はそうすることで、新たな造形を導き出し、イメージを飛躍させる視覚表現を行っている。近年の主な個展に「Sculptural Field」(MARUEIDO JAPAN、東京、2022年)、「colored oil」(KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY、東京、2020年)や、「コントロールX:切り取りの制御」(Hogaleeとの二人展。ソノ アイダ#新有楽町、2022年)がある。「sanwacompany Art Award / Art in The House 2020」ファイナリスト(2020年)、Photo London Emerging Photographer of the Year Awardファイナリスト(英国、2020年)。
あらゆる現象学的メディウムを用い、普遍的なモチーフに新たな解釈を提示する現代美術プライマリー作品を扱うギャラリー。取り扱い作家は、若手日本人作家から国際芸術祭で活躍する海外作家まで幅広い。2014年にアートオフィス設立、15年よりギャラリー開廊、17年春に清澄白河に移転(内装・外装は永山祐子が建築設計)。18年春、写真専門のサテライトギャラリーとしてKANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYを西麻布に移転オープン。国内外の現代美術アートフェアに積極的に参加しながら、2つのギャラリースペースにて個展やグループ展を定期的に企画。
カヨコユウキ
- A7
- 駒込
- A7
- 駒込
野沢 裕
野沢裕は、見慣れた風景に複数の時間・空間・偶然を故意に仕掛けたような写真、映像、インスタレーション等を制作している。揺れるカーテンがつくるラインと山脈の稜線など、 複数の時間・空間・次元をユーモラスに重ね、あるいは入れ子状にするような仕掛けで、観る者の想像力を誘う。また展覧会では、作品同士が織りなす関係性で空間全体をつくり出す構成も特徴といえる。今回の個展はいずれも新作となる、写真と絵画、および映像作品から構成される予定。野沢は1983年静岡県生まれ。2008年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻を卒業、2011年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了。2014年にはIEDデザイン大学マドリード校にてMFA(写真)を取得した。
*野沢は「AWT VIDEO」にも映像作品を出展予定。
2011年、オフィスとビューイングルームを設立。15年、東京の下町の雰囲気と歴史ある六義園が隣接する駒込に移転。古い木造倉庫を改装し、横長の大きな窓から柔らかく自然光が降り注ぐギャラリースペースを新設、現代アートに関する展覧会などの企画やアーティストマネジメントを行う。取り扱い作家は、櫃田伸也、髙木大地、富田正宣、エヴェリン・タオチェン・ワン、大野綾子、大田黒衣美、諏訪未知、今村洋平、利部志穂、井出賢嗣、松下和暉など。国際的なアートフェアへも出展しているほか、ドイツ・ケルンにてギャラリー「ECHO」を共同運営している。個人的な体験や経験、そこから生まれた謎や問いを注意深く検証し、編み出した方法で作品を制作する作家とコラボレーションを行う。日常生活から得られる様々な素材やイメージを扱い、価値観の多様化や社会の分断が進む現代社会において共生するためのヒントとなるような作品を紹介している。
MEM
- C6
- 恵比寿
- C6
- 恵比寿
「モノ」と「コト」と「イメージ」をめぐって
「もの」と「こと」は、日本語での思考をかたちづくる重要な概念と言われる。美術作品も、このふたつの言葉を巡ってつくられると言えるだろう。「もの」は「空間のある部分を占め、人間の感覚でとらえることのできる形をもつ対象」、「こと」は「思考・意識の対象となるものや、現象・行為・性質など抽象的なものをさす語」と国語辞書にはある。それぞれに「物」「者」、「事」「言」と漢字を当て嵌めることで、より深い思索の森が広がっていく。そこへさらに「イメージ」という言葉を加え、立ち現れてくる新たな風景がある。展示作家の一人である大西茂(1928–1994)は数学者としての研究と同時に、実験的な写真作品や墨による抽象画を制作した、異色の表現者。瀧口修造やミシェル・タピエら評論家とも交流しながら独自の実践を続けた。本展では「モノ」「コト」「イメージ」をめぐる表現を、大西を含む複数のギャラリーアーティストの作品を通して紹介する。
MEM(Multiply Encoded Messages)は、1997年大阪・四天王寺で設立。2010年に恵比寿のナディッフアパートに移転、現在に至る。森村泰昌、石原友明、松井智惠をはじめとする1980年代に台頭した関西の代表的作家の紹介を中心に出発し、同時代の作家と共に彼らの作品が初めて発表される現場を共同でつくり上げ、長期的にアーティストの仕事をサポートしている。戦前・戦後初期に活躍した近代期の作家たちの仕事を調査し、当時の社会との関係の中でどのように作品が生まれ、変化・発展していったか、美術史や写真史の中でどのように位置付けられたかを検証している。これらの調査資料のアーカイブは、ギャラリーのウェブサイトなどで公開している。
ケンナカハシ
- D4
- 新宿
- D4
- 新宿
原田裕規
原田裕規は、とるにたらない視覚文化をモチーフに、テクノロジーやパフォーマンスを用いて作品を制作してきた。今展では、原田にとって初めての取り組みとなる平面作品のシリーズ「ドリームスケープ」が発表される。同シリーズは、2020年頃より世界的に流行しているデジタル風景表現の潮流「ドリームスケープ」に着想を得たもの。非現実的な静寂感、安心感、無菌室感などに象徴されるドリームスケープの表現を、原田は「現代の世界情勢や地球環境を反映した風景画」であるとしている。こうした視点に立ってつくられた原田のドリームスケープ・シリーズより、本展ではハワイ・マウイ島のラハイナが題材になった《ホーム・ポート》と、原田の出身地・岩国の山々が描かれた新作の《残照》が発表される。
2014年設立。社会におけるアートと人との関係や対話について、新たな理解を追求するための人間的探求を行い、拡大する集合的歴史の文脈において、現在のグローバル社会の様々な問題に注目し実践を続けている。主な展覧会に原田裕規「Waiting for」(2022年)、「イミ・クネーベル、エリック・スワーズ」(2022年)、佐藤雅晴「死神先生」(2019年)、森栄喜「Letter to My Son」(2018年)など。
コタロウヌカガ
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
コア・ポア、レンベル・ヤワルカーニ(二人展)
コア・ポアは1987年英国エクセター生まれ。イランにルーツを持つ彼の「カーペット・ペインティング」は、ペルシャ絨毯をモチーフに、日本の浮世絵、西洋の抽象画など多様な要素を取り入れ、文化的交流とアイデンティティの探求をテーマとする。これは自身のルーツや、さまざまな国で暮らした経験が反映されているという。2015年と2017年にForbes誌の「30 Under 30」リストに選出されるなど注目を集め、現在はロサンゼルスを拠点とする。
レンベル・ヤワルカーニは1985年生まれ、ペルーのアーティスト、作家、キュレーター、活動家。ウイトト族に属し、その神話と西洋美術の伝統および技法を融合させた作品を制作する。彼の絵画はウイトト族の思考、物語、日常生活を鮮やかな色彩と繊細な線で表現し、アマゾンの動植物、精霊、人間などが分子レベルでつながる様子を描いている。2024年のヴェネツィア・ビエンナーレにも出展。
2018年に新たな現代アートの中心地として注目される天王洲のTERRADA Art Complexにギャラリーをオープン。21年には異文化が交差し多様な情報が発信される六本木に2つ目のスペースを設けた。国内外の先鋭的なアーティストと共に独自性の高いギャラリープログラムを展開。国内外の美術機関やコレクターなど、アートのエコシステムを構成する各コンポーネントと連動し、積極的にアーティストの活動を支援しつつ、既存の枠組みを超えた試みやプロジェクトを推進している。アートと社会の曖昧な関係性の中で、アートを成立させる歴史的、文化的、科学的、美学的な文脈にアプローチし、過去を読み解き、今を捉え直し、未来について思索している。
オオタファインアーツ
- E2
- E4
- 六本木
- E2
- E4
- 六本木
チェン・ウェイ
北京で活動を続けてきたアーティスト、チェン・ウェイは、中国の一人っ子政策や改革開放政策以後に生まれた「80後」世代のアーティストのひとり。チェンの写真作品は、急速な発展によって非現実的な姿を見せる都市の、架空の場面をセットで作って撮影したものである。これらの作品は、そこに暮らすはずの人々の不在感や疎外感、あるいは劇的に成長する世界における社会と個人の関係について考えさせる。今回は彼の新作群を、LEDパネルを用いた立体作品とともに展示する予定。
1994年、恵比寿にて開廊。草間彌生を含む幅広い日本人アーティストを積極的に取り扱い、現在は、絵画、映像、インスタレーション、工芸まで多様な作家・作品を紹介し、若手作家の発掘にも力を注ぐ。2012年にシンガポール、17年に上海に新スペースをオープン。歴史や地域で美術を考える視点と、東アジアから東南アジアにいたる「アジアの帯」を視野に据え、中国、シンガポール、インドネシア、インド、フィリピンなど、アジア出身の作家の企画を多数展開。アジアパシフィック地域の新たなコンテキスト創出に貢献している。
ギャラリー38
- D6
- 原宿
- D6
- 原宿
細井美裕
ギャラリー38では細井美裕の初個展を開催する。細井は、マルチチャンネル音響を用いたサウンドインスタレーションや、屋外インスタレーション、舞台作品を手掛けるほか、音を土地や人の記憶媒体として扱いサウンドスケープを再構築するなど、音が空間の認識をどう変容させるかに焦点を当てた作品制作を行っている。また2024年は、高谷史郎(ダムタイプ)による舞台作品『Tangent』にプロジェクトメンバーとして参加した。これまで長野県立美術館、愛知県芸術劇場、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、山口情報芸術センター [YCAM]、国際音響学会、羽田空港、日比谷公園など各所で作品を発表しており、11月10日までICCにて開催されているグループ展にも参加している。今回の個展は、新作を含むサウンドインスタレーション、サウンドピースなどで構成される予定。
2016年9月、神宮前でオープンした現代美術ギャラリー。植松永次による個展以来、ステファニー・クエール、クリスチャン・プーレイ、ハートムット・ランダウアー、ロマーン・カディロン、オリバー・マースデンなど、多くの展覧会を開催。海外のアーティストを日本に紹介すると共に、日本の新進作家や歴史的に重要な作家を発掘し、海外に紹介することを目指している。
スカイザバスハウス
- A8
- 根津
- A8
- 根津
ヴァジコ・チャッキアーニ
映像、彫刻、インスタレーションなどを通じ、社会的現実と私的生活の中で揺れ動く人間の内面を寓意あふれる手つきで扱うアーティストの、日本では6年ぶりの個展。展示は今回のために制作される新作の映像作品と彫刻作品で構成される。映像作品《Big and Little hands》は、作家の故郷でもあるジョージア、トビリシの市場を舞台にある親子を描いたもので、そこに資本主義による人々の生活への広範な干渉と搾取、生と死の弁証法が織り込まれる。チャッキアーニはグルジア工科大学で数学と情報学を学んだあと美術の道へ進み、アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーを経て、2009年から13年までベルリン芸術大学にてグレゴール・シュナイダーに師事。第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2017年)のジョージア館展示を担当するなど、その詩情や寓意に富んだ表現が評価されている。
都内でも古い街並みを残す台東区谷中に、1993年に創設。美術館や東京藝術大学が密集する上野からほど近く、約200年の歴史を持つ由緒ある銭湯「柏湯」を改装したギャラリー空間は、一歩中に入るとモルタルの床に白い壁面のニュートラルなホワイトキューブが広がり、高い天井から柔らかな自然光が差し込む。国内外における現代アートの潮流をつなぐ結び目として機能し、アートシーンにおいて主導的な役割を果たすことを常に心掛け、幅広い世代の多様なアーティストを輩出。こうした理念のもと、近年は若手作家の実験スペース「駒込倉庫」、作品保存の現場を展示空間へ拡張した「SCAI PARK」、現代アートシーンのさらなる交流と進展を育む企画展スペース「SCAI PIRAMIDE」の開設など、新たなビジョンを実現している。
アーティゾン美術館
- B9
- 京橋
- B9
- 京橋
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて
開館(2020年)から毎年開催している、石橋財団コレクションと現代のアーティストが共演する「ジャム・セッション」展。今回は、第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で日本館代表アーティストに選出されるなど活躍目覚ましい、毛利悠子を迎える。彼女の独創的なインスタレーションや彫刻は、磁力や電流、空気や埃、水や温度など、空間が潜在的に有している「流れ/変化」に形を与え、私たちの新たな知覚の回路を開く。
「ピュシス」は、通例「自然」や「本性」と訳されるギリシア語である。それは「万物の始原=原理とはなにか」を問うた初期ギリシア哲学 の中心的な考察対象だった。生成、変化、消滅といった運動に本性を見いだすその思索は、毛利の創作と重ねてみることができる。毛利の国内初の大規模個展となる本展では、新・旧作品と、作家の視点で選ばれた石橋財団コレクションを並べ、ここでしか体感できない微細な音や動きで満たされた静謐でいて有機的な空間にいざなう。
なお同時期には、ルノワールやドランによる人物画の名作が集う展覧会「ひとを描く」、および「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 マティスのアトリエ」も開催予定。
公益財団法人石橋財団が運営し、23階建て高層ビル「ミュージアムタワー京橋」の低層部に位置する美術館。1952年開館のブリヂストン美術館を前身とし、同じ京橋に2020年1月に開館した。「ARTIZON(アーティゾン)」とは、「ART」と「HORIZON(地平)」を組み合わせた造語で、時代を切り拓くアートの地平を感じてほしいという意思が込められている。「創造の体感」をコンセプトに、評価の高い印象派や日本の近代洋画の作品に加え、新開館にともない戦後の抽象画や日本の近世美術も強化。「石橋財団コレクション」の幅と厚みを拡大し、古代から現代にわたる展覧会を開催している。
ウェイティングルーム
- A3
- 江戸川橋
- A3
- 江戸川橋
オノデラユキ
ウェイティングルームでは今回、ゲストアーティストとしてオノデラユキの新作展を開催する。オノデラは東京に生まれ、1993年からはパリにアトリエを構えて世界各地で活動を続けている。写真を中心的な手段としながら、カメラの中にビー玉を入れて撮影するなどの独創的・思索的な発想や、事件や伝説から構築された物語的な世界観などによって、ユニークで実験的な作品を数多く制作。その背景にあるのは、写真が私たちと世界との関係を変えた、という認識である。また、自ら焼き付けた2mを超える銀塩写真や、油絵具で着彩を施した細密な写真作品、荒々しい超大型のコラージュなど、機械的と思われる写真の概念を覆すほどに、彼女の作品には手の痕跡が刻まれている。作品はパリのポンピドゥー・センターやサンフランシスコ近代美術館、東京国立近代美術館など、世界各地の美術機関にコレクションされている。
様々なメディアを横断しながら表現する最新鋭のコンテンポラリーアートを紹介することを目的に、2010年秋に恵比寿にオープン。17年秋、現在の江戸川橋・神楽坂エリアに移転。「ギャラリーは入りづらい」というイメージを一掃するために、ギャラリーの名前にもなっている「WAITINGROOM(待合室)」という性格に焦点を当てた空間づくりをし、鑑賞者とギャラリスト、アーティストの間に自然と会話が生まれるような雰囲気づくりに力を入れている。
XYZコレクティブ
- A6
- 巣鴨
- A6
- 巣鴨
ビー・イングリッド・オルソン
シカゴ在住のアーティスト、ビー・イングリッド・オルソンの個展。彼女は写真、彫刻、パフォーマンスの要素を取り入れながら、身体と空間の境界をめぐる探求を続けている。例えば写真作品では、作家自身のパフォーマティブな身体が、奇妙な小道具と化した建材などと共に断片的に示される。大胆なフレーミングや、ときには鏡合わせで、または一人称的視点で示される複層的なイメージは、見る者の知覚を混乱させるかもしれない。しかし同時に、そこに作家の遊び心あふれる探究心や、意図と解釈のズレを生産的にとらえる態度を垣間見ることもできる。オルソンは1987年生まれ。今年2024年は、ホイットニー・ビエンナーレ2024(ホイットニー美術館、ニューヨーク)などで作品を発表している。今回の個展は、全新作で構成される予定。
XYZ collective / THE STEAK HOUSE DOSKOIはアーティストランギャラリー。2011年に設立、16年より現在の巣鴨に移転した。国内外問わずグループ展や個展を開催。また13年よりNADA Miamiに出展やParis Internationale、June Art Fairなどのアートフェアに参加。近年の展覧会には、長谷川友香個展(2021年)、片山真妃個展(2021年)、Veit Laurent Kurz キュレーション(2021年)がある。
AWT BAR
- D1
- D9
- E3
- 表参道
- D1
- D9
- E3
- 表参道
「AWT BAR」は、国内外のアートファンが集う憩いの場。南⻘⼭の複合ビル「emergence aoyama complex」を会場に、ランドスケープアーキテクトの戸村英子が設計を担当します。ランドスケープは、人と自然がつくる、私たちを取り囲む風景や景色や環境のこと。自然の織りなす有機的なランドスケープが、東京都心にたたずむAWT BARという空間につくりだされます。
フードを手掛けるのは⻘⼭「EMMÉ」の延命寺美也。食とアートをつなぐモチーフとしての「花」をイメージしてつくられた季節の一品「新ゴボウとベーコンのケークサレ」と甘い「タタンモンブラン」をお楽しみいただけます。AWT参加施設で展覧会を開催する、荒川ナッシュ医、小泉明郎、束芋という3名のアーティストとのコラボレーションカクテルを味わえるのもAWT BARならではの体験です。
AWT FOCUS
- C1
- E1
- F1
- 虎ノ門
- C1
- E1
- F1
- 虎ノ門
大地と風と火と:アジアから想像する未来
第2回となるAWT FOCUSの監修を務めるのは、森美術館館長であり国立アートリサーチセンター長も兼任する片岡真実。「大地と風と火と:アジアから想像する未来」と題し、政治や経済など人為的な分類や力による統治ではなく、自然の摂理や不可視のエネルギーといった観点から世界を見つめるアジア的世界観を起点に、多様性が共存する未来を考えます。
展示は「宇宙の構造」「手、身体、祈り」「見えない力」「自然界の循環とエネルギー」の4セクションに分かれ、日本からインドネシア、韓国、台湾、フィリピン、ブラジル、香港、メキシコまで、世界各地域から57組のアーティストが参加。日本の26のギャラリーに加え、ソウルのKukje Galleryやマニラ、ニューヨークに拠点を置くSilverlens、台北のTKG+など海外のギャラリーも作品を出展します。
2023年に始まった「AWT FOCUS」は、美術館での作品鑑賞とギャラリーでの作品購⼊というふたつの体験を掛け合わせた「買える展覧会」です。展示は毎年異なるテーマのもとでキュレーションされ、出展作品はすべて購入できます。会場は現存する日本最古の私立美術館である大倉集古館です。
AWT VIDEO
- B1
- F2
- 大手町
- B1
- F2
- 大手町
飛行機雲か山脈か
国際的なキュレーターをゲストに迎えて、アートウィーク東京参加ギャラリーの所属作家の映像作品から構成したプログラムを上映するAWT VIDEOを、オフィシャルパートナーのSMBCグループが提供する三井住友銀行東館を会場に実施します。
今回は、ニューヨークのスカルプチャーセンターのディレクターを務めるソフラブ・モヘビが監修。「飛行機雲か山脈か」と題し、13名のアーティストによる14作品を上映します。
PGI
- C2
- 麻布十番
- C2
- 麻布十番
今道子作品展「Recent Works(仮)」
今道子は、自身の想像の中にある非現実の現実を、視覚芸術である写真を用いて表現する。1980年代半ばより作家活動を始め、野菜や魚などの食材、また花や昆虫を素材としてオブジェを制作し、それらを撮影して印画紙に焼き付けた作品で知られる。近年は幾度となく訪れているメキシコのモチーフを取り入れ、同地の宗教観や自身の死生観を融合させた作品を制作。よりリアルに生と死や輪廻転生をも連想させるオブジェが使われている。民話や伝説の中で生かされる想像上の動物が教訓の寓意であるように、今作品のオブジェは彼女の死生観、ひいては祈りの寓意でもあるのだろう。今回の個展では、新作約20点を発表予定。
1979年、写真専門ギャラリーの先駆けとして虎ノ門にフォト・ギャラリー・インターナショナルを開廊。2015年に東麻布へ移転し、ギャラリー名をPGIに変更した。アンセル・アダムス、エドワード・ウェストン、ハリー・キャラハン、エメット・ゴーウィンなど海外作家の作品を紹介。また日本からは、石元泰博、川田喜久治、奈良原一高、細江英公といった戦後日本を代表する巨匠や、三好耕三、今道子、伊藤義彦ら気鋭の写真家をキャリア初期から取り上げつつ、佐藤信太郎、新井卓、清水裕貴、平本成海など新進作家の紹介にも力を入れる。